研究紀要第122号 「「生きる力」をはぐくむ教育課程に関する研究」 -008/076page
(オ)「総合的な学習の時間」の実践に関する重要事項について
次の調査として,「総合的な学習の時間」を実践していく上でどのようなことが重要だと考えているか11の項目を示して尋ねてみた。
「前期」「後期」とも「―人―人の教職員が学習の意義や目的を明確にする」「学習活動の内容を選択,重点化し,自校の実態に合うようにする」を重要な要素として挙げている。その中で「後期」の特徴として「児童生徒が互いに自由に話し合い,課題解決への意欲を高めるような学校風土をつくる」「日頃から教師の協同による授業づくりを実践する」の割合が増加している。
(カ)移行期における「総合的な学習の時間」の実施について
平成12年度からの移行期に関して「総合的な学習の時間」を実施するかどうか尋ねた。それによると,調査対象の小学校では,全学校で「実施する」と答えた。中学校でもほぼ全学校で実施の予定である。それに対して,高等学校ではほとんどが「実施しない」と回答し実施に慎重な姿勢を示した。
また,実施予定の小学校,中学校で,どの程度の時間数を計上する予定か尋ねた。その結果,小学校では35時間程度が最も多く,次いでその倍の70時間程度となった。中学校では,全学校で35時間以下にとどまり,平成12年度は比較的少ない時間数で実施しようとする傾向がうかがえる。
実施方法については,「―時期に集中して実施する」学校が小学校,中学校とも多く,「その他」では,「『年間を通して実施』と『―時期に集中して実施』を併用して実施する」や「1学期と2学期だけ実施する」といった学校もある。
(3)まとめ
実態調査の結果,各学校では「総合的な学習の時間」の実施に向けて課題意識を持ちながら,完全実施に向けて着実な取り組みがなされていることがわかった。
しかし,実施に向けて解決しなければならない様々な問題も指摘されている。調査の自由記述箇所にも「教科の学習の定着」「個に応じた指導」「予算,経費の問題」「地域の人材の活用」「施設等での受け入れの問題」などが挙げられていた。
今後,移行期に実践を重ねながら,明らかになった問題点の解決に取り組んでいくものと思われる。