研究紀要第122号 「「生きる力」をはぐくむ教育課程に関する研究」 -011/076page
(4) 「総合的な学習の時間」の具体的な展開の視点
―中 学 校―
教科担任制をとる中学校では,「総合的な学習の時間」を実施していく上で解決していかなければならない課題は多い。
そこで,ここでは中学校における「総合的な学習の時間」の完全実施に向けた取り組みの視点を述べる。視点1 教科内で「知の総合化」を意識した取り組みを展開する
例えば,理科の学習では,植物から動物,地質,気象,天体,運動,熱,化学反応,分子・原子など多様な学習内容になっており,これらを環境という観点から総合的に取り扱うことも可能である。
このようなことは,社会や技術・家庭,美術等でも同様に考えられる。
従って,中学校では「総合的な学習の時間」を展開する内容との橋渡しを考慮し,自分の担当する専門教科の指導の中で「知の総合化」を意識した授業を展開することもできる。視点2 2つ以上の教科・領域を関連させた取り組みを展開する
各教科等で学習した基盤の上に,2つ以上の教科・領域間で,関連させたい学習内容や身に付けさせたい資質や能カ,学習スキル等をすべての教員の協カのもとに,―覧表形式にするなどして明らかにする。そして,それらを関連させた学習内容・活動を1つの単元構想としてまとめ,学習活動の中で有機的に関連付けた知の形成を図っていく。
例えば,理科の音の学習と音楽の音階や楽器の性質の学習,数学の関数の学習と理科の実験・観察,各教科における指導とコンピュータの活用を有機的に結び付けるなど,様々に考えられる。
また,道徳の時間と教科を関連させたり,特別活動と教科学習とを結び付けた学習活動を展開させたりして教科と領域間を関連させた取り組みを展開することも,今まで以上に重要になってくる。
さらに,異教科間ティーム・ティーチングについても検討し,実施できるところから取り組んでいく必要がある。視点3 情報通信ネットワークを活用した総合的な課題への取り組みを展開する
コンピュータによるインターネットの利用など,情報通信ネットワークを積極的に活用して,環境問題,福祉・健康,国際理解などの総合的な課題に取り組ませる。その中で,課題解決のための体験的,探究的な学習活動を展開することが大切である。また,学習の結果を報告書にまとめたり,発表したり,情報を発信したりするなどの学習活動に取り組み,教師やその道の専門家の適切な支援の下に,「総合的な知の形成」を図る。
その過程を通して,課題設定能カ,情報の収集・活用・発信するカ,論理的な思考カ・判断カ,問題の解決カ,表現カ・発表カなどの資質や能カの育成を図っていく。
これら3つの視点を踏まえて,各学校で移行期間に具体的な取り組みを繰り返しながら,評価・改善を加えて,より実態にあった「総合的な学習の時間」の学習活動を構想していくことが大切である。視点4 完全実施期における特色ある学習活功を展開する
平成14年度からの完全実施にあたっては移行期間における「総合的な学習の時間」の様々な取り組みをベースにして,次のような視点を大切にしながら取り組んでいく必要がある。
1.指導体制を整備し,教科横断的な学習を展開する。
2.小学校との関連を図り,多様な体験活動を取り入れた学習を展開する。
3.進路指導や道徳教育との関連を図った学習を展開する。
4.生徒の学び方の指導,自己学習カの育成を重視する。