研究紀要第122号 「「生きる力」をはぐくむ教育課程に関する研究」 -012/076page

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(5) 「総合的な学習の時間」の具体的な展開の視点

―高等学校―

 平成11年6月の事務次官通知により,「総合的な学習の時間」は,平成12年度から導入が可能となった。今後の計画・実施に向けての展開の視点を考察する。

視点1 自己の在り方生き方を考えることができるようにする

 学習指導要領の総則では,ねらいについて次のように記載されている。(総則 第4款)

(1) 自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資 質や能方を育てること。
(2) 学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む 態度を育て,自己の在り方生き方を考えることができるようにすること。

 趣旨や理念については,基本的に小・中学校と変わらない。注目したいのは,小・中学校の学習指導要領におけるねらいが「自己の生き方を考える」という記述に対し,高校では「自己の在り方生き方を考える」となっていることである。この点を踏まえ,教職員―人―人がねらいを正しく理解し,特定の個人に負うことなく全教職員で自校に合った在り方を構築することが大切である。

視点2 課題解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育成する

 高等学校には,普通科・総合学科・職業教育を主とする学科が設置されている。また,コースが 設置されている場合もあり,各学校の教育目標や 生徒の進路目標は多様である。このような中で教 育課程や学習内容を検討する場合は,はじめに自校の実態把握と育成したい生徒(人材)像を明らか にしておく必要がある。次に生徒自らの興味・関心に基づき,ゆとりをもって課題解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度の育成を図る学習内容の展開を検討する必要がある。

視点3 知識や技能の深化,総合化が図れるような学習活動を展開する

 学習活動の内容としては,「国際理解」「情報」環境」「福祉・健康」「ボランティア活動」等が 考えられる。また,「人権」「平和」「地域産業」「生産活動」等も考えられるが,そのすべてが各 学校の自由裁量に任されている。その際,各学校 で留意しなければならないことは,小・中学校と の関連を図り多様な学習活動を展開することと, 知識や技術の深化,総合化を図る学習を展開する ことである。

 「総合的な学習」とは,学習対象並びに学習活動の特性によって成立する学習であると考えられるので,生徒主体の学習だからといって「総合的な学習」とは言えないし,単に体験的・イべント的な学習のみでは「総合的な学習」とは言えない。また,在り方や生き方を取り上げているからといって,それだけでも「総合的な学習」にはならない。いずれにしても実施にあたっては,ガイダンス機能を充実させることが大切である。

 以上の視点の他に高等学校では,職業学科を主とする学科においては,総合的な学習の時間における学習活動により,家庭,農業,工業,商業,水産,家庭若しくは情報の各教科に属する「課題研究」,「看護臨床実習」又は「社会福祉演習」の履修と同様の成果が期待できる場合においては,総合的な学習の時間における学習活動をもって課題研究等の履修の―部または全部に替えることができる。また,総合学科においても,総合的な学習の時間における学習活動により,「課題研究」の履修の―部または全部に替えることができる。


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