研究紀要第123号 「学力向上のための授業改善に関する調査・実践研究」 -022/076page
き,用紙に貼った。見付けたものをいくつか発表したあと,教師から比例の関係にある事象をあげ,これらは比例の関係であることを知らせた。児童は「比例」とはどういうことか考え,これが次時の課題であることを確認し,次時から「比例」の学習を進めた。
イ 単元の終末
導入で見付けた関数関係を,学習した知識を基に比例か反比例かを確かめる活動を行った。
2 小学校との連携を図る指導について
― 中学校1年「関数と比例―比例と反比例―」―小学校の第6学年において,比例の意味,それを表す式やグラフについて学習している。中学校ではその学習を基に指導を展開していくことが大切であり,生徒にとっては復習の機会ともなる。
まず,小学校で学習した内容から比例の事象とそうでない事象の2つを示し,比例かどうかを調べさせた。そのときに「比例」の性質についていくつかあげさせ,板書した。それを基に2つの事象が比例かどうか確かめた。
次に「○○さんが,毎分90mの速さで歩いています。」という事象を提示し,伴って変わる量を見付けさせた。いくつかの伴って変わる量から,「歩く時間と,それに伴って変わる道のり」に着目し,それが比例かどうかを課題として調べることにした。
そして,調べたことを発表し全員で内容を検討した。その中で,式で表した生徒の考えを例にとり,小学校では比例の式は「y=決まった数×x」で表現したが,中学校では―般式は「y = ax」で表し,aは比例定数であることを指導した。その後,まとめとして,身のまわりから「y = ax」となる比例関係を見付け,その比例定数を確認する活動を行った。
3 実践をふりかえって
(1) 「視点ア・イ」について
l次関数の事象について,図に表したり,式や対応表,グラフで表現することにより,関数の考え方のもとになる「何が変化すると,それに伴って何が変化するのか」「何と何が対応するのか」ということを押さえることができた。また,いろいろな表現方法が関連し合っていることも理解させることができた。さらに,1次関数の式「y=ax+b」をグラフに表すことにより,値が予想できたり,対応表から変化の割合を見付け,「a」や「b」の値を求めたりすることができたことからも効果があったと思われる。事象については,教科書にある教材を活用したが,生徒の実態等を踏まえ,より身近な事象の教材化が望まれる。(2) 「視点ウ」について
コンピュータを活用するよさ,効果について再認識できた。市販のソフトを使用することが多いが,何をねらいに,どの場面で,どのような効果が期待できるのか等を,あらかじめ踏まえておくことはいうまでもない。今回の実践は,教師が操作し プロジェクタにより画面を投影する方法を採ったが,できれば生徒が直接活用することにより,興味・関心を高め,更に関数指導の充実を図っていきたい。(3) 「視点エ」について
小学校と中学校,中学校と高等学校の連携と,いうことも配慮して授業を組み立てることにより,それぞれの段階でのつまずきをなくして指導することができ,基礎・基本の定着という点で効果があった。関数の領域に限らず,指導する学習内容の系統性を踏まえ,また,生徒の実態を把握し,ていねいに指導することが,今後ますます大切になる。