研究紀要第123号 「学力向上のための授業改善に関する調査・実践研究」 -027/076page

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高等学校保健体育科

自主的,自発的な活動を目指した,選択制授業の改善
〜評価システムの活用と役割行動能力の育成を通して〜

1 研究の趣旨

 高等学校の保健体育では,課題解決型の学習として選択制授業が強調されている。しかし,生徒へのアンケート調査結果から,選択制授業への認識不足,情意面(「好きなことができる」「気晴らしになる」等)のみで取り組む傾向,専門性向上意欲の不足等の問題点があげられる。これらの状況を改善していくためには,教師も生徒も選択制授業に対して意識を改革する必要がある。つまり,生涯スポーツに結び付くための技能や知識,ルールや運動の楽しさ,意義等を選択制授業で身に付けることが大切である。そこで,本研究は生徒が選択した各種目において,評価システムを活用し,各自の役割行動能カの育成を図ることによって,問題点を改善し,授業により―層自主的・自発的に取り組めるようにするとともに,生涯スポーツに結び付く能カ,態度等を身に付けられるようにすることを主たるねらいとするものである。

2 研究の内容

(1)1年次の研究内容
○ 選択制授業に関する文献等の調査研究
○ 生徒の実態把握と授業成果を確認するためのアンケート,ルールテスト内容の検討と実施
○ 選択制授業の実施,考察
○ 1年次研究の成果と課題の洗い出し

(2)2年次の研究内容
○ 2年次研究の計画作成
○ 生徒の実態把握と授業成果を確認するためのアンケート,ルールテストの実施
○ 選択制授業の実施,考察
○ 研究のまとめ

3 研究の構想

(1)授業の見通し
 生徒が選択制授業の意義と必要性を理解し,生涯にわたって運動に親しむ態度の育成を図ることは,大切なことである。そのために a.評価システム を活用したり, b.役割行動 を生徒が自覚したりして,意欲をもって授業に取り組むようになれば,自主的・自発的な活動が展開されるとともに,スポーツの楽しさや意義を理解し,運動に親しむ態度の育成が図れるであろう。さらに,今まで情意面のみで授業に参加していた生徒たちも,選択した種目の専門性を幅広く身に付けることができ,授業に対して積極的に取り組めるようになるであろう。

(2)用語について

a 評価システム とは,次のことについて,生徒が 自ら評価をしていくことである。
○ ルールに関する筆記試験による評価
○ ゲーム中の技能や戦術の評価
○ ゲームの審判や得点係の自己評価表による評価
○ 相互評価表による評価

b 役割行動 とは,次のような役割を分担し合い,それぞれが自主的にその責任を果たし,専門性や運動の楽しさなどを身に付けていくことである。
○ キャプテン ○ 準備係 ○ 計画立案係 ○ コーチ ○ チームウォッチャー 

4 研究の実際

(1)選択制授業への認識不足を改善するために
評価システム・役割行動を取り入れたことによって,授業に目的をもち参加できたというアンケート結果が出ている。また生徒の授業後の感想に,
● 自分たちで全てを進めていくので,授業に対しやる気が出た。
● 自分たちのやりたい種目を,強制ではなく自分たちの計画に基づいてできたので,楽しく積極的に参加できた。

というものもあり,以上のような感想や調査結果などから,選択制授業への認識は深められたと考えられる。


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