研究紀要第123号 「学力向上のための授業改善に関する調査・実践研究」 -028/076page
(2)情意面のみで取り組む授業の改善のために
次のグラフは,授業へ取り組むときの気持ちを調査した結果である。ここで注目されることは「自分たちで行える」「技術・技能を高める」がポイントを上げ,「気晴らしの授業」がポイントを下げたことであり,選択した種目に目的をもって積極的に取り組んだことがうかがえる。
(3)専門性向上意欲の不足を改善するために
今回のシステムを生徒が理解し,専門性向上意欲が高まった要因の―つとして,授業者が部活動所属の生徒をチーム内で生かせるよう助言したり,ルールブックを利用して戦術のヒントを与えたりという積極的な支援があげられる。次のグラフが,このシステムが役立ったことを表している。
評価システム・役割行動が専門性を高めるために,役立ちましたか?
(4)評価能力向上のために
オリエンテーション時に評価方法を説明し,チームウォッチャーを中心に,そのチームの評価基準を決めさせた結果,1年次よりも,その基準が具体的になり,評価能カも向上した。
5 研究の成果と課題
(1)研究の成果
a 評価システム・役割行動を選択制授業に取り入 れることによって,生徒が情意面だけでなく目的 をもって授業に積極的に取り組むことができるようになった。
b 教師は,資料作成,評価表の点検等を通し,生徒に対し,積極的な支援を行うことができた。
c 授業者の感想に「運動を計画,運営する能力を 養うために有効な手段であった。」とあり,このシステムは,各種目において技術だけでなく幅広い専門性を高めるのに効果的であった。
d オリエンテーション時に配付したプリントや各評価表は,生徒たちの相互評価能方を高めるのに役立ち,授業に取り組むための指針となった。
以上のようなことから,選択制授業に評価システムや役割行動を取り入れたことは自主的,自発的な活動のために効果的であったと考えられる。(2)今後の課題
a 生徒が選択制授業の意義と授業の流れを理解することが,より授業を充実させると考えられるの で,評価システム・役割行動の内容をより吟味していく必要がある。
b 今回の授業では選択種目を―人1種目に限って 行っているが,学校の状況に応じて複数の種目が 実施できるようになれば,生徒にとってより興味 深い授業になると考えられる。
c 運動技能能カが高くても,評価表の意義を理解せず,取り組みに消極的な生徒も見られる。また,評価基準に対する個人の受け止め方の違いから妥当な評価になっていない場合もあるので,教師がどのような形で支援していけばよいかも課題である。<参考文献>
1)文部省:「保健体育審議会答申」(平成9年9月)
2)杉山重利編著:「どう変わる21世紀の学校体育・健康教育」 大修館書店(平成10年3月)