研究紀要第124号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -043/076page

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実践6 
高等学校 理科 生物IB

1 単元・対象

○ 生殖と発生  発生とその仕組み(2時間)
○ 2年 2クラス 63名

2 教材のエ夫と活用

(1)工夫した教材と意図

a 寒天包埋固定標本
 寒天包埋固定標本とは,―枚のシャーレにホルマリン固定した胚を寒天で包埋したもので,次のような特徴がある。

・寒天が支持体となり胚の崩れを防ぐことができる。
・正中断面や横断面など思い通りの切り口を作ることができる。
・寒天のブロックの底面を様々な角度に切り,切断面の向きを自由に変えることで,胚を多方向から観測することができる。
・保存性に優れており,複数のクラスの準備を一度に済ますことができる

寒天包埋固定標本
寒天包埋固定標本

尾芽胚の断面図
尾芽胚の断面図

 この教材を用いて,多段階の発生標本の外形や断面を観察させることで,比較・分類する科学的な思考を促すことができる。
 また,外形と対比しながら断面を観察し,発生段階ごとの形態の変化に気付かせることもできる。

b 粘土による胚モデル
 粘土による胚モデル教材とは,色付きの小麦粘土を用いて製作した胚の模型である。本実践では,原膓胚のモデルを製作した。

粘土による原膓胚のモデル
粘土による原膓胚のモデル

 粘土細工であるため,親しみやすく,見てわかり,生徒の主体的な活動を引き出すことができる。
 また,製作した模型の断面を作ったり,模型を分解し,再び組み立てたりできるため,最初にイメージした立体的な構造が正しいかどうか確認することができる。

原膓胚の胚モデルの断面図
原膓胚の胚モデルの断面図

 この教材は,寒天包埋固定標本の観察と組み合わせることで,モデルを製作する過程で実物と関連付けて総合的に考えたり,モデルから実物を分析的に考えるなど,モデル化する思考を促すことができる。

(2)授業における活用
a 寒天包埋固定標本を用いた「発生の過程」の観察(第1時)
 はじめに,生徒は,寒天包埋固定標本を用いた観察の方法について説明を受けた後,寒天包埋固定標本より胚を切り出し,外形の観察を行った。
 次に,教科書や資料集の図や写真,あるいは,切り出した胚どうしを比較しながら,発生段階ごとに分類した。さらに,スケッチすることにより外形の特徴を捉えた。
 最後に,外形から断面を予想し,胚を切断した。その断面を観察し,スケッチした。そして,外形と断面を比較しながら発生段階ごとの特徴と変化を捉えた。


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