研究紀要第127号 「「生きる力」を育てる学校教育の改革」 -003/074page

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材開発や授業展開について研究する。

(3)情報ネットワークの教育的活用に関する研究

 教育情報の共有化や有効活用の在り方,教育場面での効果的な活用の在り方について研究する。

(4)豊かな人間関係をはぐくむ指導援助に関する研究

 児童生徒が各発達段階において身に付けておきたい自己肯定感や人とかかわる技能の内容と指導援助の在り方について研究する。

2 「生きる力」を育てるために何が必要か

 中央教育審議会の第1次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」では「生きる力」を次の3つとしている。 注6・7

・「自分さがしの旅,自立心・自己抑制力・自己責任や自助の精神,個性尊重」などの言葉に見られる「自ら生きる力」

・「他者との共生・異質なものへの寛容,他人を思いやる心や優しさ,ボランティアなど社会貢献の精神」などの言葉に見られる「共に生きる力」

・「あふれる情報の中から,自分に本当に必要な情報を選択し,主体的に自らの考えを築き上げていく力,理性的な判断力や合理的な精神,美しいものや自然に感動する心,柔らかな感性,我が国の文化や伝統を尊重する態度」などの言葉に見られる「豊かに生きる力」

 しかし,個性尊重を旗印に育っているはずの若者たちは逆に「みんなと同じでいたい」心性をもっているようで,興味・関心,生活パターン等の全般にわたって同一化してきている。例えば,タマゴッチやポケモンが流行すると我も我もと同じキャラクターを求め,1980年代には10年間で12曲だったミリオンセラー曲が1998年1年間で17曲も出るといった状況が生じている。 注8  自分の趣味に合った生活をすることが個性発揮の基本という見方もあるが,遊び仲間と同じものを身に付け,同じスタイルで過ごすという程度では,個性的と言うことはできないであろう。友達と互いの考えをぶつけ合い,本音で話し合ったり,同じ目標に向かって切磋琢磨し,時には友情を分かち合ったりする中から新たな自分に目覚め,自分なりのものの見方,考え方を身に付けていくものである。

 子供たち一人一人に「生きる力」が育つには,手に汗して働くことにより自分の生活をつくり上げていく経験,学ぶことが生活と密接にかかわりがあることの実感,体験的な活動を展開する中での人とのかかわり,自分なりに取り組むことによって何かをなし遂げる充実感を味わうこと,といったものが必要とされよう。

図1

 各学校は,そのような体験重視,子供たちの主体性重視の教育課程を編成し,実践を通して学ぶ教育を展開していくことが求められているのであり,各教科・道徳・特別活動・総合的な学習の時間を有機的に関連付け,子供の発達段階を踏まえて指導していくことが必要なのである。かつて,子供たちの身の回りには豊かな自然があり,隣近所の人々とも少なからずかかわり合っていたため,学校での学びが受験中心であっても家庭や地域の場でカバーできた。しかし今,都会型生活がほとんどになり,そのようなことは望めない。その意味からも,学校教育において社会体験や自然体験を豊かにする必要が生じてくるものと考える。

 社会体験や自然体験で感じた疑問や驚きを出発点とする学習や,それらのことを生活に生かす場と活動が確保されることによって学ぶ意味が納得できる。そこで獲得した知識や技能によって自分がどんな可能性を増したかが実感できよう。更には,より深く学び続けようとする意欲がわいてくるものと思われる。

 次に,体験的な活動を展開していくためには共同作業や役割分担といった人と人とのかかわり合う場が生じてくる。そこから互いを認め合い,助け合う活動が生まれ,個々の児童生徒の考えが尊重される活動となっていくものと考える。

 また,情報があふれる中での生活を考えれば,自分にとってどんな情報が大切なのか,何が有益な情


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