研究紀要第128号 「特色ある学校づくりを目指す教育課程に関する研究」 -009/074page

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である」という回答の理由を,9項目の選択肢を設定して尋ねた。その主な理由は,

 ア 教職員の趣旨理解が不十分である。

 イ 教職員間の連携が不足している。

 ウ 会議のための時間確保ができない。

の3項目が多く,「校長・教頭のリーダーシップに難がある」や「地域の実態や協力の度合いの把握が不十分である」という理由も挙げている。<2>の回答によると,ほとんどの学校で「教育課程編成上に創意・工夫を加えている」という結果となっているが,学校が抱える課題の把握や教職員の共通理解が十分でないままに学校教育を実施しているという大きな問題が浮き上がってくる。

グラフ 職員間の共通理解が十分できなかった理由

<4> 創意工夫された学校経営や学習活動

 創意工夫した学校経営や学習活動について,自由記述で尋ねた。多数の回答を得たが集約すると次の五つの事項にまとめられる。

 ア 体験・生産活動  イ 他校との交流活動  ウ ボランティア活動  エ 縦割りグループによる活動  オ 地域の人材を活用した活動

 学習活動に関する創意工夫は見られたが,学校経営に関する創意工夫は,少なかった。

<5> 今後特に力を入れたい学習活動

 特色ある学校づくりの推進を図るために,今後特に力を入れたい事項を,19項目の選択肢を設定して尋ねた。小学校においては,「心の教育の充実」が第1位で「教科教育の充実」が第5位であるのに対して,中学校・高等学校では「教科教育の充実」がともに第1位で,「指導方法の工夫・改善」がそれぞれ第4位,第2位となり,「心の教育の充実」は第3位,第4位となった。

 これは,教科担任制をとる中学校・高等学校の特性であり,また,「基礎学力の向上と教科指導の充実」「教育内容・方法の改善充実」を重点目標に掲げる本県の実態を踏まえたものと思われる。

1 心の教育の充実
2 学習活動における人材活用・施設の利用
3 「総合的な学習の時間」の定着
4 地域社会人材の開発
5 教科教育の充実

1 教科教育の充実
2 「総合的な学習の時間」の定着
3 心の教育の充実
4 指導方法の工夫・改善
5 学校間の連携(小・中・高との連携)

1 教科教育の充実
2 指導方法の工夫・改善
3 新学習指導要領の趣旨の理解
4 心の教育の充実
5 学校間の連携(小・中・高との連携)

 「『総合的な学習の時間』の充実」については,新学習指導要領の完全実施に向けて創意・工夫がより一層求められているためか,小学校・中学校では上位に挙げられている。完全実地が1年遅れる高等学校では,現在は下位に位置する。

<6> 今後の課題とまとめ

 今回の調査を総合すると,以下の3点が課題として考えられる。第1は,特色ある学校づくりと「総合的な学習の時間」の理念の再確認の問題である。理念を取り違えると,それぞれの目標を見誤るおそれがある。この場合,特色ある学校づくりが全て「総合的な学習の時間」に集約されることは望ましくない。第2は,組織の問題である。新しく学校が変わろうとしている現在,組織をどう構築し,いかに機能させるかが特色ある学校づくりの成否にかかってくる。新たに設置した組織はもちろんのこと,既存の組織の形骸化を避けた活力ある組織の運営が望まれる。特に高等学校は,半数の学校が検討する組織を設置していない現状で,教育課程完全実施に向けてどう取り組むのか気になるところである。今後の研究として,さらに組織の機能についての調査も必要である。第3は,教職員の共通理解の問題である。共通理解と協働は学校経営には欠かせないものである。共通理解が不十分なままに学習活動を展開している現状は,各学校の教育活動に歪みを生み,ひいては学習指導要領の趣旨達成を損なう恐れがある。今後,各学校は総合的な点検作業が必要ではないか。


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