研究紀要第128号 「特色ある学校づくりを目指す教育課程に関する研究」 -015/074page
3 道徳教育を中核とした特色ある学校づくり
(1) 道徳教育を重視する意図
児童生徒のいじめや不登校,自他の生命を軽視した問題行動などが増加しており,その解決のために学校・家庭・地域社会全体で心の教育が進められている。
学校では特に,道徳の時間をかなめとする道徳教育の充実がさらに求められている。児童生徒の実態を踏まえ,道徳教育を前面に出して特色ある学校づくりを推進していきたいとする考えは,多くの学校でもっていると思われる。
しかし,指導する教師自身は,現在までのところ道徳教育に対して,様々な課題をかかえている。
例えば,当教育センターで行われている「道徳教育実践講座」の中の,「道徳教育指導上の諸問題」についての話し合いでは,「道徳に関する研修の場が少ない」「子どもの心に響くような道徳の時間にするための資料が少ない」「道徳の評価が難しく,子供たちの道徳的実践に結びついているか懸念される」等,道徳の研修・資料・評価についての問題が特に多く出されている。
そこで,道徳教育を中核とした特色ある学校づくりをするためには,これらの問題の解決を図ることが必要であると考え,いくつかの手立てを設定して,研究に取り組んだ。
(2) 「道徳教育通信」を活用した校内研修
<1> 「道徳教育通信」の作成と活用
道徳教育を重視して,特色ある学校づくりを進めていくには,校内研修の充実が不可欠である。道徳の授業研究会の開催,総合的な学習の時間における道徳的実践の在り方の研究等を通して,研修を深めていくことが必要であろう。そのような研修に加えて,日頃から道徳教育に対して関心を持ち,日々の道徳の授業について教師間で話し合いながら研修を深める姿も大切である。教師が道徳教育への関心を高めたり,教師間で日常的に情報交換が行われやすくしたりするための手立てとして,道徳教育の現状や指導方法を掲載した通信の定期的な発行を考えた。
通信は,各学校の実情に合わせて,道徳主任が創意工夫して作成することになるが,教科や生徒指導等で作成時間の確保が難しく発行に関して困難さも考えられる。そこで,通信の試案を「道徳教育通信」と称して,できる限り教師のニーズに合うものを作成し,各学校で活用できるようにしたいと考えた。
試案を作成するにあたって,まず,教師のニーズを調査した。ニーズは,教師がかかえている道徳教育に関する諸問題と直結すると考え,当教育センターの「道徳教育実践講座」の受講者が挙げた諸問題のキーワードを分類した。
その結果から,4つの視点を設定し,視点ごとに10枚ずつ計40枚の試案を作成した。
講座の受講者の中で,活用希望の教師を対象に試案のコピーを配布した。活用後アンケート調査を実施し,改善すべき点をまとめ,10枚を追加して「道徳の授業を改善する50のヒント」というタイトルで通信を改善した。
<2> 活用の実際
改善した通信の活用を研究協力校に依頼し,実際にどのような効果があるか調べてみた。発行は研究協力校の道徳主任が担当し,1週間に2回のペースで行った。また,保存できるように専用のファイルを用意した。アンケートには次のような自由記述が記載された。