研究紀要第129号 「自ら学び考える力を育成する授業改善に関する研究1」 -022/074page
2 研究・実践の内容
小学校国語科… 国語科における「話す力」を育てる指導の工夫 小学校体育科… 導入部に「体はぐしの運動」を位置付けた器械運動の授業 中学校社会科… 生徒の相互交流で社会認識を深める指導 高等学校芸術科(音楽)… 日本の伝統音楽に親しませるための指導の工夫 高等学校芸術科(美術)… メディア社会に主体的に関わる力を育成する「映像メディア表現」の教材開発 「学ぶ楽しさ」や「成就感」を味わうことによって,子供たちは,「自ら学ぼうとする意欲」を持っことができる。また「自ら学び,自ら考える力」の育成を重視した授業の過程において,「学ぶ楽しさ」や「成就感」を味わうことができる。この学習のサイクルを繰り返しながら,「自ら学び,自ら考える力」は,質的に高まっていくと考える。このような学習のサイクルを重視して,実践的な研究を行った。
小学校国語科 では,新学習指導要領で新たに盛り込まれた「伝え合う力」の中でも,特に「話す力」の育成に焦点を当て研究した。教材とその提示の方法を工夫することで,児童は聞き手が分かりやすいように組み立てを工夫して話すことができた。
小学校体育科 では,新学習指導要領で新設された「体ほぐしの運動」の取り扱いの工夫について研究した。主運動と関連付けた「体ほぐしの運動」を行った子供たちは,意欲的に活動し,学び方を身に付け,技能を高め,「成就感」を味わうことができた。
中学校社会科 では,クロスセッションを導入した授業の改善について研究した。生徒一人一人が課題を分担して調べ,さらに相互に交流することで,自分の考えを深めるとともに,「学ぶ楽しさ」を体験することができた。
高等学校芸術科音楽 では,日本の伝統音楽に親しませるための指導の工夫について研究した。拳を使った題材設定の工夫によって,生徒は「学ぶ楽しさ」を味わいながら,日本の音階や音楽形式による「創作活動」に主体的に取り組むことができた。
高等学校芸術科美術 では,新学習指導要領で新設された表現分野「映像メディア表現」における教材を開発した。生徒たちはその授業を通して,ビジュアルな表現の能力を高め,同時に映像メディアに対する理解を深めることができた。
3 研究のまとめと今後の課題
「学ぶ楽しさ」や「成就感」を味わいながら,子供たちが「生きる力」としての「学力」を身に付けることができるように,子供たち一人一人の学習ニーズの把握に努めるとともに,学習意欲を引き出すような魅力ある教材の開発を行い,「自ら学び,自ら考える力」を育成するための授業改善について研究した。「自ら学び,自ら考える力」を質的にさらに高めていくためには,自己評価が欠かせない。自己評価は,自分が学習によってどう変わったのか可視的な形で確認できることが望ましい。そのためには,「自ら学び,自ら考える力」を育成することができたかどうかを確認できる場面を設定し,自己評価していくという視点が,ますます重要となる。
一方「自ら学ぶ」能力を身に付けていく過程では,子供たち一人一人の自立的な学習態度を十分に尊重することが必要であるが,一人の学習だけでは自分の学習方法や思考の枠を越えることはできない。相互に交流することによって,その能力は質的に高められる。相互交流し,互いにそのよさを認め合うような相互評価を取り入れることが,一層重要となる。
今後もこのような二つの観点を考慮しながら,「自ら学び,自ら考える力」の育成を目指した授業改善について,実践的に研究を進めて行きたい。