研究紀要第129号 「自ら学び考える力を育成する授業改善に関する研究1」 -023/074page
2 授業改善を図る実践研究
小学校国語科
国語科における「話す力」を育てる指導
〜教材提示の工夫を通して〜
1 研究の趣旨
新学習指導要領の国語科では,「伝え合う力を高める」という文言が教科の目標の中に新たに盛り込まれ,互いの立場や考え方を尊重して言葉で伝え合う能力を育成することに重点がおかれた。また,領域構成も改められたが,特に,その中の「A 話すこと・聞くこと」については,研究が必ずしも十分であるとは言えない。どのような「話す力」を身に付けさせればよいのか,どのような授業の展開が適切であるのかが分からないこと,教材が不足していることなどの問題がある。
そこで,教師が,教材及びその提示方法を工夫することにより,小学校第5学年の「話すこと・聞くこと」に関する指導内容の「組立てを工夫して話す力」を育てることができるであろうと考え本研究を実施した。
2 教材及び提示方法の工夫の視点
(1) 繰り返し,選んで聞くことができる教材
(2) 相互評価や教師の評価につながる教材
(3) 音声言語による提示
(4) 指導のねらいに迫るための提示
3 授業の構想
(1) 単 元 名 21世紀につなぐ夢
(2) 単元の目標 自分の意図が柏手によく分かるように組立てを工夫しながら話すことができる。
(3) 指導計画及び教材提示の工夫
第1時 河合純一氏 ※1 の本やビデオにふれ,自分の将来の夢について考える。
※1 パラリンピックの競泳全盲部門で金メダルを獲得するだけでなく,少年のころからの夢であった普通中学校の教師になることも実現した。著書に「夢 追いかけて」(ひくまの出版)がある。
工夫1 話すことの学習に対する意欲を高める教材提示の工夫。(サイコロの目によって対話の話題を決める。)(視点(4))
工夫2 スピーチの内容について考えを深める教材提示の工夫。(河合純一氏のビデオを視聴させ著書の紹介をする。)(視点(4)) 第2時 スピーチも構成が大切であることに気付き,スピーチメモを書く。
工夫3 構成が大切であることを意識付ける教材提示の工夫。(視点(1)(3)(4)) 工夫4 個に応じた支援の工夫。(3種類のスピーチメモの用紙を準備する。)(視点(4)) 第3時 スピーチの練習をし,録音する。
第4時 スピーチを聞き合い,よいところを見つける。
工夫5 効果的な相互評価のための教材提示の工夫。(パソコンのファイルに児童の氏名をつけて提示し,自由に選んで聞くことができるようにする。)(視点(1)(2)(3)) 4 授業の実際(第2時)
(1) 本時の目標
意図が相手に伝わりやすくするための構成を工夫することが大切であることに気付き,スピーチメモを書くことができる。
(2)教材を提示する。(工夫3)
一つのスピーチ例を録音して三つの部分に分け, スキャントーク ※2 のデータにしたカードを,順序を入れ替えて黒板に提示し,1枚ずつ音声を再生する。
※2 音声を紙に音声情報(スキャントークコード)として印刷し,スキャントークリーダーで再生するシステム。
T 前の時間に,みんなの夢を話してもらいました。ここにも,ある人が夢について話したものがあるんだけど,順番がバラバラになってしまいました。ちょっと,聞いてくださいね。 T (スキャントークのデータを1枚目のカードから読み込んで再生する。)「それは,ジャイアンツの松井選手のようにホームランをたくさん打ってみんなを喜ばせたいからです。」(A) T (同じく2枚目,3枚目も無言のうちに再生