研究紀要第129号 「自ら学び考える力を育成する授業改善に関する研究1」 -024/074page
する。)「ぼくの将来の夢は,プロ野球の選手になることです。」(B)
「そのために,これから15年間,毎日素振りを百回することに決めました。皆さん,応援していてください。」(C)C (児童は真剣な表情で聞いている。3枚目の再生が終わるや否や,カードを指差しながら口々に,)できた。真中から1・2・3。(と適切なスピーチの順序を答えていた。) T じゃあ,ちょっとこれ,顔だけじゃ分かんないから,つけておくね。(とA・B・Cと書かれた磁石を貼り付けた。) C (多数の児童が口々に,)B・A・C。B・A・Cだよ。(B・C・A。の声も聞こえた。) (3) 小グループごとに教材を与え検討させる。
児童は,音声を再生しながら,3枚のカードを,聞き手として分かりやすい順番に並べ替えていた。「Aを,もう一画聞かせて。」と繰り返し聞いたり,「違う。逆だ,逆だ。」と順番を入れ替えながら聞いたりしていた。また,「それは,ジャイアンツの松井選手のように……。」と,指を折りながら確認するようにつぶやく児童や,ノートに書き写して根拠を見つけようとする児童も見られ,意欲が伝わってきた。
そして,この話し合いの中で,児童は,結論の部分を最初に話した方が聞き手にとって分かりやすいこと,次に理由を言った方がよいことなどに気付いていき,その後の全体での話し合いでも,順序をそろえる根拠として発表することができた。
(4) スピーチの構成を工夫させる。(工夫4)
児童は,このようにして,話すときも文章を書くときと同じように,構成を工夫することが大切であるということに気付くことができた。そして,この学習を生かして,自分の「将来の夢」のスピーチの構成を工夫しようとしていた。
(5) 次時への発展(工夫5)
次の時間には,普段,ほとんど話さない児童や教師の手厚い支援が必要な児童も含め,全員が自信をもってマイクに向かい,組立てを考えたスピーチを,パソコンを使って録音することができた。
5 考察と研究のまとめ
(1) 考察
1 ゲーム的要素を取り入れた教材提示の工夫をしたことで,話すことに対する児童の意欲が高まったことが意識調査の変容から分かった。
2 音声言語での教材を分割して提示したことで,スピーチの組立てを工夫しようとする課題意識を持つようになった。
3 本の著者に電子メールの添付ファイルでスピーチを送ることにしたことで,目的意識や伝え合う柏手意識を持たせることができた。
4 児童が案を練るときワークシート(スピーチメモの用紙,3種類)を配付することにより,自分の考えを生かし工夫することができるようにしたが,方法や形式などさらに工夫が必要である。
5 「話すこと・聞くこと」についての系統性及び学年内での指導計画については,さらに研究が必要である。
(2) まとめ
「話すこと・聞くこと」の指導において,教材とその提示の方法を工夫すれば,児童は,明確な課題意識を持ち,学習に取り組み,「話す力」を獲得していくということが明らかになった。