研究紀要第129号 「自ら学び考える力を育成する授業改善に関する研究1」 -028/074page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

<2> 第2学年:歴史的分野「大正時代」

 共通課題「大正時代をネーミングしよう」のもと, A政治的な動き,B民衆運動,C関東大震災,D教育・学問・文学,E大衆文化 の5つの視点から学習班(5〜6人構成)で課題を分担した。調査結果の共有化の後,学習班さらには全体の場で大正時代をネーミングする活動を,短冊を用いてKJ法で類型化しながら行った。

<学習班で調査結果を共有化している場面>
<学習班で調査結果を共有化している場面>

[生徒が考えた大正時代のネーミング]
○ 現代社会につながる革命的な時代
○ 市民の生活や権利が向上した自由な時代
○ シーソーのような不安定な時代   など

(5) 授業の考察

<1> クロス・セッションでは,教師による意図的なグループ編成が極めて重要である。特に上位生徒と下位生徒を組み合わせたことで,教える,教えられるという経験を通して学び合うことの大切さを実感させることができた。

<2> 相互発表活動の後に,調査班に戻り,うまく説明できなかった点や答えられなかった質問等についての意見交換をし,再び学習班で補充し合う活動を取り入れた。これによって,調査結果の共有化がより一層図られ,授業が活性化した。

<3> 名札マグネット,KJ法の活用は,生徒の学習への主体的参加の姿勢をつくりだすことや考えの練り上げに効果的であった。また,書く活動(自分の考えを書いてから話し合いを行う,聞き手は必ずメモをとるなど)を重視して学習を進めることが,話し合いの質を高めるとともに,社会認識を深めることにもつながった。

<4> 最初の試みであったため予定時数をオーバーしたり,授業時間外の活動になってしまったりした部分もあった。回を重ね生徒や教師が慣れてくれば,この問題は解消していくものと考える。同時に指導内容の精選や重点化を図っていく必要性も感じた。

グラフ 社会科イメージ調査の事前・事後の比較

授業者の感想

 生徒が楽しいと感じるとともに,自ら学ぶということを体験させることができた。また,意見の交換により,他の考え方に触れ,自分の考えを深めることができた。さらに生徒同士の信顧関係も深めることができた。

4 研究のまとめ

○ クロス・セッションでは,思考力,判断力,表現力の育成はもちろん,双方向性を持った交流関係が成立するため,責任感,協力性,連帯感も育ち,生徒一人一人が主体的に授業に取り組めるようになることが分かった。

○ 今回は教師が課題を提示し,学習班→調査班→学習班という基本的な形態で授業を進めたが,生徒自身が課題を設定したり,学習の目的に応じて様々な班を組織し多様な授業形態を組み合わせたりして,学習を発展させていくことも可能である。

○ グループ間の活動の差を埋めていく手立て,班を組み替える際の支援の在り方,グループリーダーの育成など細部にわたる検討が必要である。

○ 調べ方,まとめ方,発表の仕方,聞き方,話し合いの仕方等の学習技能の指導を継続していくことによって,思考力,判断力,表現力をより一層高めていくことができるものと考える。

<参考・引用文献>

1)筒井昌博編著:「ジグソー学習入門」明治図書(平成11年2月)

2)「授業研究21」1997,10月号    明治図書(平成9年10月)

3)川喜田二郎著:「発想法」    中央公論社(平成4年4月)


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。