研究紀要第129号 「自ら学び考える力を育成する授業改善に関する研究1」 -031/074page

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高等学校芸術家(美術)

メディア社会に主体的にかかわる力を育成する「映像メディア表現」の教材開発

〜ムービー・メッセージの制作を通して〜

1 研究の趣旨

(1) 学習指導要領の改訂と現代の視覚文化

 学習指導要領の改訂により,芸術科美術の表現領域に,従来の絵画,彫亥り,デザインに加え,「映像メディア表現」という新しい分野が加えられた。

表現領域における分野の改編
表1 表現領域における分野の改編

 これは,美術教育を現代社会の視覚文化に積極的にかかわらせていくという方向性を明確に指し示したものであり,画期的な改編と受け止められている。

(2) 新しいメディアと教材開発

 高等学校学習指導要領解説芸術編では,「映像メディア表現」の学習内容がより具体的にあげられており,写真やビデオ,コンピュータ等の機材が,その中心的なメディアとして位置付けられている。

 本研究では,ビデオカメラとコンピュータを用いた映像作品の制作に的を絞り,その教材開発をとおして,「映像メディア表現」の可能性や課題点,また,メディア・リテラシーとのかかわりについて検証し,考察を深めていきたいと考えた。

2 教材開発の視点と授業の実際

(1) 題材提示と大テーマ(キーワード)の設定

 今回は2学年の選択授業2クラスにおいて授業を実践した。両クラスとも5つの制作グループで編成し,各グループは生徒2,3名で構成した。

 準備段階として,演習活動の中で,コンピュータによる映像編集のシステムを大まかに理解させた。その後,題材名を「ムービー・メッセージ」と提示し,自分たちの考えやイメージを柏手に伝えることを目標において,1〜2分程度の映像作品にまとめ上げることとした。

 テーマは,映像の軸といえる動的,時間的要素を意識して制作させるように,「躍動」と「変化」の2つの大テーマ(キーワード)をクラス別に設定し,これをもとにグループごとにアイデアを出し合い,話し合いながらグループ・テーマを決定させた。

(2) 発想・構想段階での手立て

 グループによる制作活動においては,作品に対する共通したイメージをいかに持ち得るかが重要になってくるため,発想・構想の段階におけるグループ活動では2つの手立てを講じた。

<1> 発想や構想段階での付箋紙の活用

 グループ・テーマの模索や,映像のアイデアを持ち寄る段階では,グループの活動を活性化させるために付箋紙を利用した。大テーマやグループ・テーマから連想した単語や,映像・音などのアイデアを思い思いに付箋紙に記入し,台紙に貼りながら検討を重ねていった。

 付箋紙の活用に関しては,いくつかを例示した後,グループごとに考えるようにさせたため, ブレーンストーミング ※1 的手法でアイデアを自由に出し合ったり, KJ法 ※2 のように類型化したり,映像の流れを考えながらフローチャート状に並べ替えたりと,各グループそれぞれに異なった活用をしていた。

※1 ブレーンストーミングとは,自由な雰囲気の中で,アイデアを出していく集団思考の一技法。アメリカのオズポーンによって考案された。

※2 P.27を参照。

写真1 <付箋紙を活用したグループ活動>
<付箋紙を活用したグループ活動>

<2> イメージを具体化させる絵コンテの作成

 付箋紙を用いた活動により作品のアイデアがまとまった段階で,絵コンテの作成に入る。絵コンテの


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