研究紀要第130号 「自ら学び自ら考える力を育成する授業改善に関する研究2」 -034/074page

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 例えば,課題の把握や事象の理解を図る過程などでは,予想や推論,分析的な見方や総合的な判断など必要な科学的な思考の要素がいくつか組み合わされて思考が行われる。

(3) 自ら学び自ら考える力と科学的な思考を促す授業

 自ら学び自ら考える力にかかわる要素は,科学的な思考と密接なかかわり合いを持つ。

 例えば,科学的な思考を促すためには,興味・関心や学ぼうとする内発的な意欲などを高めることが必要である。また,論理的な思考力や創造的な思考力を伸長させるためには,学習の中で生じた疑問や課題を,科学的な思考をはたらかせて解決する場面を体験させることが必要である。更に,科学的な思考をはたらかせて課題を解決することで,学ぶ喜びや達成感を感じたり,新たな興味・関心を見い出したりする。

 このように,自ら学び自ら考える力にかかわる要素の伸長は,科学的な思考の活発化と互いに関連し合っているものといえる。

(4) 教材や授業展開の工夫

 理科,技術・家庭では,児童生徒の科学的な思考を促し,自ら学び自ら考える力にかかわる要素の伸良を図る上で,教材や授業展開の工夫は極めて重要である。

 開発・工夫された教材を用いることは,児童生徒の興味・関心や学習意欲を高めることにつながる。また,創造的な思考をはたらかせて実験方法を工夫したり,抱いた疑問を実験の結果に基づき論理的に考えて解決したりすることにつながる。

 その際,教師は児童生徒の立場に立ち,学習場面ではたらく科学的な思考の要素問の関連性や重要性,はたらく順序などを事前に把握し,科学的な思考を促すように指導計画や授業展開を工夫することが必要である。

2 実践・調査研究の内容

 まず,名実践・調査研究では,上記の考えに基づき,設定した単元において,自ら学び自ら考える力にかかわる要素を選んだ。次に,選んだ要素の伸長を図るために,単元の学習ではたらく科学的な思考を促すことができるような教材や授業展開の工夫に取り組んだ。その後,授業実践や協力者へのアンケート調査を行い,工夫した教材や授業展開が科学的な思考の活発化や自ら学び自ら考える力にかかわる要素の伸長に結びついたかどうかを調べた。

 各実践・調査研究の概要は下表のとおりである。

実践・調査研究の概要

校 種
教 科

学年・単元・領域等:研究概要

小学校
理 科

4年「電気の通り方」:コメット法・描画法を用いた概念分析を基にした仮設検証型授業

中学校
理 科


第1分野「光の進み方」:可動式ミラーの開発とそれを活用した課題追求型授業
中学校
技・家

電気領域「電気機器のしくみ」:導入教材の工夫と線膨張率実験装置等を用いた授業
高 校
生 物

「代謝」:脱水素酵素検出試薬として,取り扱いが簡単なTTCを活用した探究活動
中・高
地 学
調
気象領域:気圧の変化を実験できる簡易気圧変化測定器の工夫と活用
高 校
科 学
調
「有機化合物」:簡易抽出器を活用した油脂に関する探究活動

3 研究のまとめ

 自ら学び自ら考える力にかかわる要素に焦点を当て,教材や授業展開の工夫をすることで,科学的な思考を促すことができ,焦点化した要素の伸長を図ることができた。

 児童生徒の自ら学び自ら考える力を育成するためには,本研究の趣旨や成果を生かしながら,さらに多くの単元で教材や授業展開の工夫に取り組む必要がある。

[参考文献]

1)研究紀要VOL.29    (平成12年:福島県教育センター)

2)北尾倫彦編 「自ら学び自ら考える力を育てる授業の実際」(平成11年:図書文化社)

3)梶田正巳編集 「自ら学び・考える力の育成」全課題徹底理解(平成10年:教育開発研究所)

4)松森靖夫 「新しい評価法はこれだ」新教育21シリーズ(平成12年:学校図書)


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