研究紀要第130号 「自ら学び自ら考える力を育成する授業改善に関する研究2」 -035/074page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

4 各教科での実践・調査研究

実践研究 1   小 学 校  理 科

1 単元・対象

○ 「電気の通り方」(6時間)

○ 4年 1クラス 31名

2 研究の概要

(1) 授業展開の工夫

 電流の概念については第4学年「電気のはたらき」の単元で学習するが,この学習を経てもなお,電流の概念形成が不十分な場合が多い。これは,具体的な現象の学習に偏りすぎているためではないかと考えられる。

 そこで,児童の持つ概念を分析し,その概念を基に,児童自らが仮説を立て検証するような授業を展開すれば,科学的な思考を促すことができ,電流の概念形成が促されるのではないかと考えた。

 これによって,学習意欲も高まり,創造的思考力や批判的思考力も仲良し「自ら学び自ら考える力」の育成が図られるのではないかと考えた。

 上記の考えに基づき,本研究では,児童の概念分析を主眼とする予見型の評価を重視したS−P−Dサイクルによる授業づくりに取り組み,その有効性について検証した。

(2) 授業づくりと授業における実践

【See(評価)】 Planを立てるための調査・分析

<1> コメット法,描画法を用いた把持枚念の調査

図1

 授業づくりにあたって,まず児童がどのような電流の概念を持っているのかについて,右図のような様式で調査した。

 この調査用紙は,命題に対する4つの回答から1つを選択させるコメット法と電気の流れを図に描かせる描画法を併用して把持概念を調査するものである。


<2> 把持概念の分析

 把持概念の調査によって,本学級の児童が持つ電流の概念は循環的見方,衝突的見方,消費的見方などいくつかに分類することができた。また,複数の調査に対する回答の一貫性を分析することから,それぞれの児童が持つ把持概念に対する確信度(主張に対する自信の度合い)について,判断することができた。

 その結果,初期の話し合いの場面やそれぞれの考えを検証する場面を経ることで,個人の考えがどのように変容し,全体の考えがどのように流れていくか,概念変容の予見を行うことができた。

【P18n(計画)】変容の予見をもとにした授業構想

<1> 目標概念の設定

 調査を受けて,本学級の児童にとって,本単元ではどのような概念を形成することが望ましいのかを考え,次のような目標概念を設定した。

 電気は,電池の片方から出て,もう片方へと一方的に流れ,流れ出る電気と流れ込む電気の童は同じであること。

<2> 学習計画

 目標概念に到達するためには,以下のように3つの場に分けて,授業を展開する必要があると考えた。

<お互いの考えを提案する場(提案の場)>

<それぞれの考えを検証する場(検証の場)>

<得た考えの一般性を獲得する場(獲得の場)>

<3> 反証事象,確証事象の検討

 児童は,一人一人が予想や仮説,検証方法などを自ら発想し問題解決の活動を行うことで,自己責任の自覚を持つようになる。

 しかし,検証方法については,児童だけで発想できるとは限らない。また,必ずしも,適切な方法を児童が発想するとは限らない。したがって,事前に児童が発想する検証方法を予測して,それぞれの考えの反証となり得る事象,あるいは確証となり得る事象を検討し,提示できるようにしておいた。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。