研究紀要第130号 「自ら学び自ら考える力を育成する授業改善に関する研究2」 -037/074page

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実践研究 2   中 学 校  理 科

1 単元・対象

○ 光と音

 「光の進み方」まとめ (3時間)

○ 1年 3クラス     110名

2 研究の概要

 科学的な思考を促すために,課題を易から難の順に提示し,簡単に繰り返し使うことができる教材を課題解決場面で用いれば,興味・関心を高め,論理的な思考力や創造的な思考力が育成されると考え授業実践を行った。

(1) 教材(可動式ミラー)の開発

図1
写真1

 光が水中から空気中に進むとき,屈折や反射を起こす事象は,生徒にとって難解なものである。そこで,水槽内で光路を変えて,光の屈折や反射の様子を簡単に調べることができるようにするために,位置や反射の角度を自由に変えられる可動式ミラーを開発した。

 図のように,可動式ミラーはミラー部と取っ手部に分かれている。ミラー部はアクリルミラーをアルミ製アングルに貼り付け,そこに磁石2個を取り付けたもので,取っ手部はプラスチック棒に磁石2個を取り付けたものである。写真のように水槽のガラス面の両面から磁力で合わせ,取っ手部を動かしてミラー郎を回転したり,移動したりすることができる。レーザー光と複数の可動式ミラーを組み合わせて,光の性質を多面的に確かめることが可能である。

(2) 授業での活用と生徒の反応

 課題は,平易なもの(レベル1)から難しいもの(レベル3)へと配列した。

 授業では,最初に各自に結果を予想させ,班の中でそれぞれの考えを検討し合う共有の場を設けてから実験を行うよう設定した。

<1> 基本的な屈折・反射と全反射の実験(第1時)

課題 固定ミラーを用いた水面での屈折・反射と全反射

 あらかじめ全反射しない角度に設定したミラーに,レーザー光を当てたときの光路を予想した。班の中で,それぞれの予想について発表し,次に実験を行い,予想と結果を比較した。同様にして,全反射する角度にミラーを設定した場合の実験も行った。

図2
写真2

 多くの生徒は,既習の蒲鉾レンズの印象が強く,水では,屈折や反射が起こらないと考えた。その結果,水面で屈折や反射が起こることを予想できなかった。実験で,レーザー光が水槽内を進み,ミラーに反射して水面で屈折や全反射が起こるのを見ると驚きの声が上がった。

<2> レーザー光で図形を描く実験(第2次)

課題  全反射を使った二等辺三角形(内容:レベル1)
 全反射を使わない二等辺三角(内容:レベル1)
 五角形と星形(内容:レベル2)
 ひし形   (内容:レベル3)

<1>で行った学習内容と関連付けながら,法則を適用させ,結果を予想させる等の科学的な思考を活性化させるため,描く図形を簡単なものから難しいものへと配列した。

図3

  3枚のミラーを用いて五角形を描かせる場合の一例

  水面での全反射を利用している 


 生徒は,興味・関心を持って試行錯誤を繰り返しながら実験に取り組んだ。レベルの高い課題になるにつれ,各自のアイデアを積極的に実験に取り入れる姿が見られた。星形やひし形等の難易度の高い課題であっても法則を適用したり,筋道を立てて考えたりしながら課題にチャレンジし,自分の予想通りに図形が描けると歓声を上げていた。また,違った方法で図形を描けないかを積極的に調べる班もあった。


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