研究紀要第130号 「自ら学び自ら考える力を育成する授業改善に関する研究2」 -038/074page
<3> 的当てゲームをする実験(第3時)
課題 ミラー1枚で的にあてる 1問(内容:レベル1) ミラー2枚で的にあてる 2問(内容:レベル2) 旗門を通過させて的にあてる 2問(内容:レベル3) 光の反射,屈折を総合的に考えさせるために,光による的当てゲームを行った。水中や水の外に的や旗門を取り付け,的の中心に近いところへ当てれば高得点を与え,さらにはレベルの高い問題ほど高得点が得られるように設定した。なお,新しいアイデアにはボーナス点を与えた。
2枚のミラーを用いて水槽外の的に当てる場合の一例
水面での全反射と屈折を利用している。
生徒は,高得点を取ろうと班の中でこれまでの学習を関連付けて総合的に考え,ゲームを進めていた。さらに,他の意見に対して,「これは,ここが違っているから的に当たらない。だから,こうしてみよう。」というような筋道を通した推論をする生徒も見られるようになった。
3 結果
(1) 関心・意欲の面から
いずれの実験においても,9割程度の生徒が自ら進んで活動できたと答えている。また,生徒の感想でも「楽しい」「おもしろい」という感想が多かった。これらのことから,本教材を用いた授業では,興味・関心や学習意欲が持続したことが分かる。
(2) 思考の面から
グラフは,論理的思考力と創造的思考力が育成されたかどうかを生徒の自己評価で調査した結果である。事前に比べて「考えた」と答えた生徒の割合が増加している。
既習の概念を用いて,筋道を通して考えることが必要な「図形」「的当て」では,ほぼ全員が論理的思考をはたらかせていたことが分かる。また,学習が進むにつれて,試行錯誤を繰り返しながら,アイデアを出し合い,創造的思考を巡らしていたといえる。
課題を平易なものから難しいものへと配列したことで,光路が描けたり,自分の言葉で説明したりする論理的思考力が次第に身に付き,難度の高い問題であっても自ら考えて取り組んでいたことが分かる。課題の通過率を見ると,課題の難度が上がっても,通過率が保持されているのは,教材が簡便で何回も試行錯誤ができ,論理的思考や創造的思考等が持続したためと考える。
4 まとめ
開発した教材とゲーム化を取り入れたことで,興味・関心,学習意欲を喚起することができた。
また,生徒が試行錯誤を繰り返すことができたことと課題の配列を工夫したことで,論理的思考力や創造的思考力等を伸長することができた。