研究紀要第130号 「自ら学び自ら考える力を育成する授業改善に関する研究2」 -042/074page

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実験に取り組んでいた。

<4> 脱水素酵素と呼吸のはたらきのまとめ(第4時)

 班ごとに前時の実験結果について話し合い,実験と学習事項を関連付けて考察を行った。話し合いの内容を班ごとに発表し,それぞれの実験結果を共有した。生徒は,実験を通して自分たちの考えを深めながら,班の話し合いに積極的に臨んでいた。

3 結果

(1) TTCを用いた実験の評価

 グラフは,授業後に,TTCを用いた実験について,生徒の自己評価により調べた結果である。実験操作の簡便さや結果の理解しやすさを問う質問に対して,肯定的に答えている生徒の割合が多かった。これは,実験操作にとらわれず,実験結果や内容を深く考察することができたからと考えられる。

グラフ1 TTCを用いた実験の評価

(2) 興味・関心,主体的な学習態度の変容

 授業前と第2時,第3時,第4時の各終わりに,興味・関心,主体的な学習態度について,生徒の自己評価により調べた。

 グラフは,興味・関心が持てたかどうかと,主体的に学習したかどうかについて,4段階の自己評価で調査し,それぞれ平均値の変化を示したものである。身近な素材を用いたり,実験の方法を工夫させたりすることによって,多くの生徒が興味・関心を高め,主体的に取り組むことができるようになったことが分かる。

グラフ2 興味・関心,主体的な学習態度の変容

(3) 科学的な思考の程度の変容

 科学的な思考の程度についても,(2)と同様に生徒の自己評価により調べた。

 グラフは,授業展開において着目した科学的な思考の各要素の自己評価の平均値の変化である。身近な発芽種子から種々の素材へと実験材料を発展させ,実験していく過程で,「問題の把握」「適切な計画」などの科学的な思考が活発になっていったことが分かる。特に,第1時,第2時の経験により,実験方法やTTCの特性の理解が進んだため,第2時に比較して第3時の「課題の把握」や「結果の予想」が伸びたと考えられる。

グラフ3 科学的な思考の程度の変容

(4) 生徒の感想

TTCは結果が出やすく,失敗する確率が少ないからよい。また,温度との関連があることも分かりやすい。
いろいろな素材を使って実験したのがおもしろかった。また,他の班や他の素材と比較することができて理解しやすかった。
班の中で,みんなで協力して実験を進めたり,予想を考えたりすることができて楽しかった。
脱水素酵素のはたらきは目には見えないものだと思っていたけれど,実験で本当に脱水素酵素がはたらいているということが理解できた。

4 まとめ

 身近な素材の活用,生徒による実験材料の選択や手順の工夫により,実験を進めることで,生徒の興味・関心や意欲を喚起し,科学的な思考を促すことができた。また,TTCは取扱いが簡単で,呼吸や成長に対する生徒の理解を深めることができる教材であることが分かった。

 今後は,温度による酵素活性の違いを調べる実験などにおいてTTCの教材としての活用法や指導法について検討していきたい。


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