研究紀要第132号 「「人間関係をつくる力」を育てる指導援助に関する研究」 -060/074page
※ モデリング ‥‥‥児童が,新しい行動を取り入れたり,それまでの行動を修正したりするには,モデルとなる人の行動を観察し模倣する行動は有効である。
※ リハーサル ・・・・・・実践するためには,人間関係に適切な行動を計画し,言語的に反復したり,実際の行動で実験的に試みることが大切である。
指導援助の中心は,学校生活を送る上で最も基本的で,心の交流が図りやすい学級を単位とする学級活動の時間が望ましいと考えた。
2 プログラムにもとづく指導援助と考察
(1) 自己肯定感を高める指導援助
<1> 他者理解を深める「4つの窓」
※ 例えば季節をテーマに,春から冬までの4つの季節(「4つの窓」)のそれぞれを教室の壁面に貼っておく。子供たちは,それぞれ自分の好きな季節を選び移動する。それぞれの季節(窓)ごとに選んだ理由を伝え合いながら他者理解を深める。
ア ねらい
自分と似たような好みを持っ友達,また,自分と違う好みを持っ友達の存在を知り,お互いの理解を深める。
イ 授業の概要
まず,「4つの窓」に入る前に,児童の感情表出を図る活動として,仲間意識を持たせる「ジャンケン列車」のショートゲームを行った。男女の触れ合いに抵抗もなく歓声が上がるなど楽しくかかわる姿が見られた。しかし,先頭として残るためにジャンケンを逃れたり,勝ち負けにクレームをつけるものがいたりしたため,一瞬堅い雰囲気になることもあった。
次に,学級目標と関連付け,「自分の考えを発表し合いながら,友達のことを知ろう」とねらいを提示し,「4つの窓」のやり方を具体的に説明するとともに,「友達の考えを否定せず最後まで聞くこと」など話し合いのルールを話した。その後,「季節」(春,夏,秋,冬)→「食べ物」(カレー,ハンバーグ,寿司,ラーメン)→「色」(赤,青,緑,黄)の順序で「4つの窓」を行った。その際,各「窓」ごとに各自が選んだ理由を伝え合った後,「窓」同士の意見交換の場を設定し他者理解が広まるようにした。児童は,友達の考えや動きに影響されることなく,自分の考えで主体的に選択し移動していた。「窓」ごとの人数のばらつきによる発表時間の違いや,個々の表現力に差があったため,「窓」内での意見交換が活発に行われたとは言えない。一人一人の発表の場を保障する手立てに問題があった。
最後に,「『4つの窓』を行って気付いたこと考えたこと」の発表とカードへの記入を通して振り返りを行った。
ウ 授業の考察と改善点
<考察>
「『4つの窓』をやってみてどうだったか」を,「楽しい」から「楽しくなかった」までの4件法で尋ねたところ「まあまあ楽しかった」も含めて19名(91%)の児童が満足していた(欠席2名)。
理由には,「人の好みはみんな違うんだなあと思った」「みんなの思っていることがよく分かって楽しかった」など,他者理解の深まりが感じられた。
しかし,「意見がたくさん言えた」ことを楽しかった理由に答えた者も6名(29%)いた。また,友達の考えを否定したり,「窓」同士の優越を競ったりする場面や,教師のリードがないところでは,話し合いが進まないグループも見られた。
<改善点>
○ ねらい達成に向けた話し合いになる工夫他の「窓」や友達の意見を批判しないように,ねらいの提示を,「窓」のやりかたを説明する中で行う。つまり,実際に「窓」を選んだ理由を発表させ