研究紀要第132号 「「人間関係をつくる力」を育てる指導援助に関する研究」 -061/074page
る中で,考え方の違いに驚きや喜びが持てるなど肯定的な受け止め方ができるよう働きかけながらねらいを提示する。
「〜だから『春』がいい」のように発表すると,「窓」の優劣や比較になりがちである。「『春』は,〜なところがいい」という答え方をするようにし,選んだ“理由”に焦点が当たるような話し合い,または理由に焦点を当てた教師のフイードバックが大切である。
「話し合い」という言語表現だけでねらい達成を考えるのではなく,各「窓」に移動した友達や選んだ「窓」のメンバーを意識させる工夫が必要と考える。
○ 話し合いが円滑に進む工夫
例えば,「窓」に集まったら円になって座り,時計回りで発表するなど話し合いのルールを決めておく。または,「一人目の人,発表しましょう。では二人目の人・・・・・・」というように,教師が話し合いをリードしていくことも考えられる。友達の考えを聞こうとする態度に欠ける児童も見られたため,基本的な技能である「受容的な聞き方」を事前に行うなどプログラムの順序を入れ替えることも考えられる。
<2> 肯定的な自己理解・他者理解を深める「わたしはだれでしょう」
※ 「いいところイメージカード」には,班の中のだれかについて,いいところが3点書かれている。それがだれのことかを予想し合ったり,確かめ合ったりしながら自己理解や他者理解を深める。
ア ねらい
自分や友達のよさを知るとともに,肯定的に認め合える態度を養う。
イ 授業の概要
授業に入る前に「いいところイメージカード」(資料4)を作成した。手順としては,まず,学級の全員に友達一人一人のいいところを学級名簿に書いてもらうようにした。次に,教師が具体的な内容になるよう補足を加えながら,いいところを3点に絞って作成した。3点目の内容は,だれもが予想しやすいものになるよう配慮した。
はじめに,教師自身のイメージカードを作成し,拡大して提示した。3つのよさを小出しにしながら児童に予想させ,この活動の内容と方法について説明した。また,3つのよさを聞き終わってからだれのことかを記入すること,学級のみんなから集めたよさなので,批判や中傷をしないことの2つをルールとして確認した。
グループ活動としたため,6人グループならその一人一人について書かれた6枚のイメージカードを個々に配布した。カードに1から6までの番号をふり,だれがどの番号のカードを担当して出題するかを決め活動に入った。
問題を読み始めると,その声に集中して予想する姿が見られた。だれのことかが分かると,机を叩いて喜びを表現する者もいた。
全員のカードを予想し終わった後に,それぞれのカードがだれのことを書いたかを解答用紙で確認した。自分のことかなと予想したカードが,本当に自分のことなのだと分かった瞬間には,恥ずかしいようなうれしいような表情が見られた。その後,友達のことで,自分が一番いいと思っていることを表す内容に下線を引き,本人にそのカードを渡す活動を取り入れ,友達に認めてもらっているということを知らせ,自分のよさに実感が持てるようにした。
最後に,「みんなのことをどう思ったか」「自分のことをどう考えたか」の2つの視点でこの活動を振り返った。みんなのことについては,「いいところを認め合えばもっと仲良くなれる」「一人一人にいいところがたくさんあるんだなと思った」という記述が見られた。また,自分のことについては,「自分のことをどう思ってくれていたか分かってよかっ