研究紀要第132号 「「人間関係をつくる力」を育てる指導援助に関する研究」 -062/074page

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た」「みんなにいいところを知ってほしいし,私もみんなのいいところをさがしたい」という記述が見られ,肯定的な自己理解・他者理解の深まりや広まりとともに,友達とかかわろうとする能動的な思いも見られた。

ウ 授業の考察と改善点

<考察>

 「『わたしはだれでしょう』をやってみてどうだったか」を4件法で尋ねたところ「まあまあ楽しかった」も含めて22名(96%)の児童が満足していた。

グラフ 授業の考察と改善点

 楽しくなかった理由には,「(書かれたいいところが)本当なのかと思った」「<1>の内容が信じられない」など,カードの内容を疑問視したり受け入れられなかったりする記述が2つ見られ,自己評価の厳しい児童への配慮が反省として残った。また,「楽しかった」と答えた中には,「グループの人のことがよく分かった」という感想が見られ,グループ内の他者理解を学級全体に広めていく必要性を感じた。

<改善点>

○ よさを受け入れられるようにする工夫

 具体的な場面を補足して本人に伝えたり,授業後の様々な場面でそのよさをフイードバックしていくことが大切になる。また,授業の様子や個々のよさを学級通信を活用して広めたり強化したりすることも考えられる。

○ 活動の工夫

 一つは,イメージカードを班に1枚とする工夫である。「私は,<1>の〜からAさんだと思う」というように,1枚のカードをもとに,みんなで予想し合うようになるため,活発な意見交換の中でねらいの達成が図られると考える。しかし,後方の児童にいくはど予想範囲が狭まり,話し合いが活発でなくなる心配がある。この場合,「私は〜からBさんだと思う」というような発言の形を決め,予め全員が予想を発表できるようにしておくことも大切である。

 二つ目は,「イメージカード」に4つ目のよさを書けるようにする工夫である。この場合も,書いてもらえない児童が出てきたり時間がかかったりすることへの配慮が必要になる。

 三つ目は,班内にとどまっている他者理解を学級全体に広める工夫である。授業後,例えば朝の会の中で,一人の児童のイメージカードを教師が紹介し,子供たちがそれを予想していく活動を位置付けることなどが考えられる。

(2) 人とかかわる技能を育てる指導援助

<1> 受容的な聞き方を身に付ける「温かい・冷たい 聞き方」

ア ねらい

 温かい聞き方・冷たい聞き方のロールプレイを通して,受容的な聞き方が相手を生かし,自分にとっても気持ちのいいものであることへの理解を深める。

イ 授業の概要

 まず,授業者(A)と補助者(B)による「冷たい聞き方」のモデリングを児童が観察した。(A)が一生懸命話をしているときに,(B)はわざと視線をそらしたり他の話をしたりした。その様子を見て児童は,「話をしているのに失礼だ」という感想を話していた。

 次に,二人一組で話す役・聞く役になり,「冷たい聞き方」のロールプレイを行った。話題は「1 遊び  2 私の家族  3 好きなテレビ番組  4 スポーツや習い事  5 将来の夢   6 好きな食べ物   7 その他話したいこと」の中からそれぞれが選んで話をした。自分が話す役になると,「イライラする」「むなしい」「頭にきた」というように,モデリングを観察したときよりも実感を伴った感想が聞かれた。

写真

 「冷たい聞き方」の後,「温かい聞き方」のモデリングとロールプレイを同じように行った。「すごく仲良くなりそうな感じがする」「聞いてくれるから話しやすかった」のように,話を聞いてもらえる喜びを表現していた。

 その後,二つの聞


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