研究紀要第132号 「「人間関係をつくる力」を育てる指導援助に関する研究」 -063/074page
き方をやってみて,「どんな感じがしたか」「これまでの自分を振り返って,どんなことを考えたか」について,振り返りカードに記入した。
ウ 授業の考察と改善点
<考察>
児童の振り返りカードを見ると,「冷たい聞き方」では,「嫌な気分になる」…7人(30%),「悲しい気持ちになる」…6人(26%),「話す意欲がなくなる」…6人(26%)。「温かい聞き方」では「うれしい気持ちになる」…10人(43%),「話しやすい」…2人(9%),「安心する」…2人(9%)など,2つの聞き方を対比しながら「温かい聞き方」のよさを実感としてとらえていた。
「考えたこと」では,70%の児童が「温かい聞き方をしたい」「これからは冷たい聞き方をやめる」と書いており,前向きに考えている様子がうかがえた。この中には,「手遊びをやめる」「目を見て聞く」のように,非言語面に着目している児童も見られた。
<2> 感情交流を促進する話し方を身に付ける「ほめること・受け止めること」
ア ねらい
「ほめる・ほめられる」「けなす・けなされる」場面のロールプレイを通して,ほめることやそれを素直に受け止めることが,両者にとって好ましい関係になることへの理解を深める。
イ 授業の概要
【4つのやりとり】 ア 「○○さんの絵,色づかいがとてもいいね。」 →「あたりまえだよ。私がかいたんだから。」 イ 「○○さんの絵,へたくそだね。」 →「…………。」 ウ 「○○さんの絵,色づかいがとてもいいね。」 →「ほんと? ほめてくれてありがとう。」 エ 「00さんの絵,へたくそだね。」 →「あなたは,もっとへたくそだ。」 この4つのやりとりの中から,互いに気持ちのいいやりとりを考えさせた。ほとんどの子が,「ほめているし,ほめられた人は感謝しているから,どちらも気分がいい」という理由から「ウ」を選んだ。その他のものは,「アは自慢している」「イは相手に失礼だ」「エはどちらにも失礼で喧嘩になりそう」という理由が聞かれた。
ロールプレイでは,自己肯定感を高める授業「わたしはだれでしょう」で使った「よいところ一覧」を活用し,「ほめる役・ほめられる役の台本」にその内容を当てはめながら行った。例えば,次のようなやりとりが行われた。
『「T君は,係の仕事を責任を持ってやるよね」→「ほんと?」→「みんなそう言っているよ。それに,誰にでもやさしくて楽しい性格だよね」→「恥ずかしいけどうれしいな」→「一番いいのは,弟や妹の面倒をよく見るし,お母さんの手伝いも進んでやることだと思うな」→「ほめてくれてありがとう。S君だっていいところがいっぱいあるよね」』
その後,振り返りカードに感じたことや考えたことを記入した。
ウ 授業の考察と改善点
<考察>
「ロールプレイをして感じたこと・考えたこと」では,はとんどの児童が「うれしくなった」(91%)と表現し,ほめられるという体験が人の気持ちを温かくすることを感じていた。
ただ,「ほめてくれなくて嫌な気持ちになった」「うれしいとは思わなかった」という感想が見られ,ロールプレイの進め方がうまくいかなかったペアもあったことが推測された。
<改善点…授業<1>と<2>を併せて>
「ぼくがK君のことをほめても,K君は何も言ってくれないのでよく分からなかった」この感想を書いた児童は,二人組のロールプレイのときにうまくいかず困った顔をしていた。どの児童にとっても有意義なロールプレイにするため,特に次の点を改善することが必要と考えた。
○ ロールプレイの前に静かに考える時間をおき,一斉に始める。
恥ずかしさやとまどいがあって,言葉が出てこな