研究紀要第132号 「「人間関係をつくる力」を育てる指導援助に関する研究」 -064/074page
いこともある。一呼吸おき,イメージづくりをさせることにより,より感情移入し言葉も出やすいと考える。
○ ロールプレイの中で台本を使うときは,単純化・焦点化する。
二人のやりとりを明確にするために使った台本がやや分かりにくかった。矢印で流れを表記する,基本的な部分をおさえた後は自由に表現させるなどの工夫をしたい。また,モデリングを取り入れると,分かりやすい。
○ ロールプレイをうまく進めることのできない児童に目を配り支援する。
中には,ロールプレイをすることに抵抗を示したり,やり方が分からなかったりするため進めることができない児童を見かける。そのような児童には,「どこまで進んだか」を確認し,授業者がやってみせることも必要になる。
<3> アサーティブな自己表現のよさを実感させる
「アサーティプって何だろう?」
ア ねらい
アサーティブ,攻撃的,非主張的の3つの自己表現が分かり,ロールプレイを通してアサーティブな自己表現のよさを実感する。
イ 授業の概要
まず,授業者(A)と補助者(B)で3つの自己表現の仕方をモデリングした。モデリングにあたっては,3つのタイプをアニメキャラクターの名前を使って「しずかちゃんタイプ(アサーティブ)」「ジャイアンタイプ(攻撃的)」「のび太タイプ(非主張的)」と名付けて児童に提示した。
モデリングは,始めに「ジャイアンタイプ」を行った。(A)が「筆かせよ」というように成圧的に話し,(B)は怖がるような仕草を見せた。その様子を見て,児童は「ほとんど脅迫だ」「貸してもらうのに乱暴だ」という感想を話した。
次に「のび太タイプ」を行った。(A)はもじもじして何も言えず,(B)はイライラしている様子を見せた。児童からは,「自分の言いたいことをはっきり言ってない」「相手に何を言っているのか聞こえない」という感想が聞かれた。
最後に「しずかちゃんタイプ」を行った。(A)は,「筆を忘れてしまったんだ。ていねいに使うから貸してくれないかな」と話し,(B)が「どうぞ」と貸した。児童は,「自分の言いたいことをはっきり言っていていい」「相手にも失礼じゃなくていい」という感想を話した。
モデリング後は,二人組になり「頼む役」と「頼まれる役」に分かれてロールプレイを行った。3つのタイプのロールプレイをした後,役割を交替してどちらの立場も体験した。
ロールプレイ終了後,「頼んでみて相手がどう感じたか」「頼まれてみて自分はどう感じたか」を振り返り,互いにフィードバックし合った。
ウ 授業の考察と改善点
<考察>
「3つのタイプの意味が分かったか」を4件法で選んだ。その結果,「分かった」(20名)「まあまあ分かった」(3名)で全員となり,本時の流れは,児童の思考に合っていたと考えられる。
自分のタイプを「のび太タイプ」と考えた児童が多かった。そういう自分を頭から否定せずに「しずかちゃんタイプ」に近づいていけるよう進めていく必要性を感じた。
<改善点>
この授業では,「3つのタイプ」を比べて「しずかちゃんタイプ」のよさを実感させることがねらいだった。しかし,児童が振り返りカードに記入する様子を観察していたときに,もしかするとロールプレイで感じたことよりも,モデリングを見たり観念的に考えたりしたことをもとに書いている児童もいるのではとの印象を持った。そこで,より実感を持たせた「振り返りの仕方」にするため,次のような改善を考えた。