研究紀要第132号 「「人間関係をつくる力」を育てる指導援助に関する研究」 -066/074page
で,より意識を高めたい。全員に行うためには,人組で行うことがよいと考える。
○ 振り返りカードに「はじめに書いた普段の自分の言い方と比べて」の一文を追加する。
「しずかちゃんタイプの自己表現に近付けたのは,どんなところからだと思いますか」という設問に上記の文を付け加える。何と比べているのかが明確になると思われる。
<5> アサーティブな自己表現の日常化を図る「こんなときどうしよう」
ア ねらい
日常の様々な場面でのアサーティブな自己表現を考え,リハーサルや振り返りを行うことで,日常生活の中で実践できる技能や態度を養う。
イ 授業の概要
1 友達に貸した鉛筆が折られた。 2 大切な本が汚され,そのまま返された。 3 宿題を忘れた友達が「ノートを写させて」と言ってきた。 4 友達が遊んでいるので仲間に入れてほしいと思った。 5 友達と遊ぶ約束をしていたが,母親に用事を頼まれた。 上の5つの場面を予め用意しておいた。今回はその中から1の事例を児童に提示した。
まず,児童は友達の気持ちも自分の気持ちも大切にした表現の仕方を考えた。怒りをぶつけると,友人関係が崩れてしまう。かといって,何も言わないでいると,もやもやした気持ちが残る。
児童は,「今度借りるときはていねいに使ってね。今日は違う鉛筆貸してあげるから」「いいよ。また削れば使えるから気にしないで」など,それぞれに表現の仕方を工夫していた。
ウ 授業の考察と改善点
<考察>
感想を見ると,「しずかちゃんタイプになってきた」「しずかちゃんタイプでしゃべると落ち着いた」「しずかちゃんタイプに近付きたい」など,しずかちゃんタイプへの意識が高まっている様子を感じた。
<改善点>
大きな改善点はなかった。ただ,児童に提示する事例の内容については,各学校で児童の生活実態に合わせて変えていくことが望ましいと感じた。
(3) 日常の指導援助
自己肯定感を高め,互いに受け入れようとする態度を育てることをねらい,班ノートを活用したスピーチ活動を行った。
班ノートでは,自己肯定感を高めることにつながるテーマを設け,感じたこと考えたことを記入し,朝の会で発表した。その中で,教師がそれらを取り上げて肯定的に受け止め,フィードバックを行った。班の中では,スピーチを聞いての感想や感じたことを記入する班ノートの欄に,子供同士がよさを記入し合う活動を進めた。
これらのことを通して,児童は,自分のよさを自覚したり,級友のよさを再発見したりすることができた。また,級友を受け入れようとする意識やつながりを持とうとする範囲の広がりが見られるようになった。
日常の指導援助をより効果的なものとするために,プログラムの内容との関連をさらに考えながら,テーマや実施時期の関連を深めたり,よさをフイードバックするための学級通信を作成したりする等の工夫が有効と考えられる。
3 児童の変容とプログラムの考察
○ 自己肯定感(調査用紙の1(丸囲み数字)3(丸囲み数字)5(丸囲み数字)〜7(丸囲み数字)の平均値)は,0.1ポイントの上昇であった。変容の大きかった項目で見ると,他者理解の「みんなのいいところを知っている」(調査用紙5(丸囲み数字))と答えた児童が,事前調査と比べ,約3割増えていた。また,「自分の「いいと思うところ」(調査用紙2(丸囲み数字))を自由記述した数でみると,学級平均で1.3から1.9に増え,反対に「欠点が気になる」(調査用紙4(丸囲み数字))と答えた児童は,約4割減少していた。
○ 人とかかわる技能として目指したアサーチィブな自己表現が,どの程度身に付いたかをとらえる調査(4件法;設問数10)の事前と事後を比較すると,平均0.4ポイント上昇するなど,全項目に好ましい変容が見られた。認知面では,「自分の考えも相手の考えも大切にして聞こうとする」「相手の気持ちを考えてわかるように話そうとする」が0.5ポイント以上の上昇を示した。行動面では,「相手の話を受容的に聞く」「自分の考えを,