平成14年度 研究紀要 Vol.32 - 000_02/069page
ま え が き
これからの日本は,どのような社会になるのだろうか。そこで求められる資質とは何だろうか。そのための教育はどうあるべきか。社会の転換期にあって,社会の存立の基盤である教育に対する期待はますます大きくなっています。しかしながら,その一方で,子どもたちは将来への夢や明確な目標を持つことができずに,学ぶ意欲が低下しているなどの深刻な教育問題が発生しています。このような今日的な教育の諸課題の解決を図るためには,それぞれの学校が,機動的にそれらの諸課題に対応することが必要です。
一人一人の生徒が抱える多種多様な教育の問題に対応し,保護者や地域住民の期待に応えるためには,目の前の生徒たちにどのような教育活動が必要なのかを,それぞれの学校が見定める必要があります。時代の流れは,各学校現場の創意工夫を生かすという方向へ向かっています。そのためには,「今まではこうだった」という発想ではなく,子どもたちやそれを取り巻く環境を見定め,さらに,自分たちで実証的に情報収集し,柔軟な発想で学校経営や学習指導に取り組んで行くことが求められています。
このような各学校の主体的かつ積極的な教育活動を支援することが,本教育センターの大きな責務であると考えています。すなわち,教育センターは,教育に関する今日的な諸課題をいち早く把握し,その解決に向けた基礎的な研究をスピーディーに行い,その成果を学校や関係教育機関に速やかに提供することが必要であると考えています。そのために,本年度新たに3つの研究チームを組織し,研究内容を公開しながら,学校現場をはじめとして大学や各種教育研究機関とも連携し,学校に視点を置いた基礎的,実践的な研究に取り組むことにしました。
ところで,文部科学省は,2002年8月「教育・文化立国」と「科学技術創造立国」の実現を目指し,義務教育から高等教育,生涯教育までを貫く人材育成の基本的なビジョンとして「人間力戦略ビジョン:新しい時代を切り拓くたくましい日本人の育成〜画一から自立と創造へ〜」を示しました。この「人間力戦略ビジョン」の柱の一番目は,確かな学力の向上であり,これは,国民の教育水準がこれからの時代の競争力の基盤であるという考え方に基づくものです。
本年度,文部科学省は,この一番目の柱である確かな学力の向上を図るために,これまでの「学力向上フロンティア事業」や「スーパーサイエンスハイスクール事業」などを充実させるとともに,新たに「学力向上フロンティアハイスクール事業」や「『総合的な学習の時間』推進事業」などの施策,習熟度別指導などのきめ細かな学習指導の実現やITを活用した学習指導の充実を図るための条件面の整備など,確かな学力の向上に向けた総合的な施策を実施します。
本県でも,学力の向上と人間性・社会性の育成を目指し,「ふくしまの教育7つの約束」のもとに「うつくしま教育改革推進プログラム」を推進しています。また,「教育の情報化推進プラン21」を策定し,ITを活用した学習指導を推進しています。
さて,本教育センターでは,本年度3つの研究チームが次のようなテーマのもとに,研究に取り組みました。
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学校評価研究チーム 「開かれた学校づくりの推進」 2 カリキュラム研究チーム 「さまざまな調査を基にして『個に応じた学習指導』を実践するための基礎研究」 3 情報活用研究チーム 「生きる力を育てる教育の情報化」
学校評価研究チームは,学校評価システムの構築をとおして「開かれた学校づくりの推進」を図るための研究を行いました。これまでの学校経営が外部から分かりにくく閉鎖的であったのを打破し,保護者や地域住民の信頼に応えながら,それぞれの学校が独自の専門的な判断によって,機動的で課題解決的な学校経営を行うシステムを構築することが大切であると考えます。学校評価研究チームは,そのために必要な学校評価システムや学校評価票の案を具体的に提示し,その内容の妥当性や有効性を研究協力校において実践的に検証しました。評価に当