研究紀要第133号「開かれた学校づくりの推進」- 016/069page
B 学校評価票2について
評価票2の試行によって,職員は,ほぼ意欲的に取り組み,計画的・組織的実践をする上でおおむね有効であったととらえている。
また,評価票2は,具体的な課題に対してP・D・C・Aのサイクルにより実践を継続することが学校運営,教育活動の改善や教職員の意識改革につながる可能性の大きいことが実証された。
問題点としては,「教職員の負担」「目標の分析と具体的計画の立案の難しさ」を指摘しており,あれもこれもというのではなく,学校の重点目標の達成等のために実施していくことが望ましいと感じている。
さらに,評価票1,2を組み合わせた評価については,賛意を表し,良いシステムであると感じている。C 児童生徒や保護者の反応
児童生徒からは,試行を通して「自分を振り返ること」「教師の意欲」とともに,「評価項目の内容の難しさ」と「教師を評価することへの抵抗」が挙げられた。
保護者からは,「学校,教職員の本気な取り組みが伝わってくる」「これを機会に子どもとの会話や観察に努めたい」「今後も継続してほしい」「意見を述べる場になる」などの意見とともに,「質問が分かりにくい」「学校内のことは分からない」「判断できない」「目的が分からない」「比べようがない」などの意見もあり,今後,児童生徒,保護者への十分な説明の必要性が感じられる。D その他
試行に参加した各学校は,確かな手応えを感じており,試行を通して学校評価の必要性の認識とともに,今後継続することによって「学校評価を育てていく」ことの重要性が指摘された。
特に「校長の真摯な姿勢と誠意により学校評価を継続していくことが,保護者や地域住民の評価眼を高めること,家庭・地域を育てることになる。このためにも,学校がより主体的に家庭・地域に働きかけることが重要」との指摘があった。
また,保護者も今回の試行から,より学校に関わっていこうとする姿勢が見られたこと,今後の学校の活動に期待する等の感想が見られたことは心強い限りである。
V 研究のまとめ
各学校が,その実態に応じて適切な学校評価を実施し,学校運営・教育活動の一層の充実に資するための提言を行うことが本研究の大きな趣旨であった。
試行に参加した各学校においては,「自校の課題が自覚され,その改善が図られた。」「保護者との信頼関係が強化された。」「児童生徒理解が深まった。」等,学校改善への確かな手応えを感じるとともに,試行を通して学校評価への認識が高まった等の感想が寄せられた。
しかし,本年度研究のおいては次のような不十分な部分や新たな課題等が明らかになり,学校評価システムの構築にまでは至らなかった。(1) 情報収集や発信の在り方については,学校評価票2においてP・D・C・Aの各ステップに位置づける方策を講じたが,システム全体からは不十分であり,具体性に欠けるものであった。
(2) 評価票1については,評価項目の内容,数,表現の仕方等について問題点も指摘された。各学校の実態に応じた評価項目が設定されるためにも,その視点や基準等新たな提言が必要である。
(3) 学校評価に対する教職員,保護者,児童生徒の認識をより高めること,併せて評価結果の公表の在り方については,まだまだ戸惑いが感じられる。これらについて具体的手立てを提言する必要がある。
(4) 学校経営計画と学校評価計画の位置付けが不十分であったこと,さらには試行期間が短かったこともあり,学校経営・運営の改善に資するための学校評価としての有効性は検証されなかった。
今後,より体系的な学校評価システムを提言し,さらなる試行を継続する必要がある。〈参考・引用文献〉
1) 学校評価の促進条件に関する開発的研究中間報告(1)
木岡一明(国立教育政策研究所 平成13年)
2) 目標管理の知識と実務 猿谷雅治・市川彰
(日本実業出版社 昭和54年)
3) 学校教育自己診断のまとめ 大阪府教育委員会
平成13年
4) 学校自己評価実施の手引き 三重県総合教育センター
平成13年
5) 現代の教育改革と学校の自己評価 矢尾板修
(ぎょうせい 平成12年)