長期研究員の研究 研究紀要第136号一人一人が意欲を持続し,知的な気付きを深める生活科の実践-050/069page
一人一人が意欲を持続し,知的な気付きを深める生活科の実践
−視点を明らかにした見取りと支援のエ夫を通して−長期研究員 小 玉 昭 男
T 研究の趣旨
本研究2年次に際し,「生活講座」の受講者に「生活科を指導する上での悩み」について調査したところ,「見取りと評価」についての悩みが多く挙げられた。具体的な内容については下図の通りである。
学習指導要領で強調されている「知的な気付きを深めていく授業」を展開するためには,視点を明らかにしたきめ細かな見取りと適切な支援(指導と評価の一体化)が大切であるが,実際には日常化並びに具体化しにくいことが明らかになった。
U 研究の概要
1 研究仮説
見取りと支援を次のような視点で工夫し,指導と評価の一体化を図れば,一人一人の活動の意欲が持続し,知的な気付きが深まるであろう。
○ 評価規準に連動した「見取りシート」の作成
○ 多様な方法による見取りとその累積
○ 一人一人の学びの筋道を大切にした支援の工夫2 研究の実際
(1) 評価規準に連動した「見取りシート」の作成
単元における評価規準及び具体的な見取りの視点を明確にするために,学習指導要領及び解説,国立教育政策研究所教育課程研究センターの参考資料をもとに全単元の評価規準一覧表を作成した。さらに,この評価規準一覧表をパソコンの差し込みファイル機能を用いて単元ごとの「見取りシート」に連動させ,評価規準を日常的に活用できるようにした。(2) 多様な方法による見取りとその累積
作成した「見取りシート」をもとに,観察・問いかけ・対話・生活科カードの活用等の多様な方法による見取りを行った。特に,話す・書くなどの表現を得意としない子に対しては細かく行動を観察し,対話やインタビューなどの意図的な働きかけを行い,適切な見取りができるように配慮した。また,見取りシートと付箋紙を活用し,KJ法的に分類整理したり,評価規準と関連づけたりして記録の累積を行い,支援の方向性を明らかにした。(3) 一人一人の学びの筋道を大切にした支援の工夫
見取りシートと付箋紙を使った見取りをもとに一人一人の学びの筋道を把握・予想した。さらに,画一的な支援に陥ることがないように「見守る」「励ます」「手を貸す」「教える」「称賛する」「共感する」等,一人一人の活動の状況や場面等に応じた支援に心がけた。(4) 授業の実際
第2学年
単元名「みんなでつくろう ぼくらの おまつり」〈単元展開の概要〉
一人一人のまつりに対する思いや願いを大切にしながら,単元を次のように展開した。