福島県教育センター所報 第2号(S46/1971.8) -002/023page

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教育内容・方法に関する研究,資料提供


一小・中・高,教材研究を中心として一
英語学習におげる「聞く・話す」指導の実践

第1研修部  鈴 木   均

 1 われわれ英語教師は,各人各様に,それぞれの言語観をもち,それにもとづいて毎目の指導にあたっている。このことは,まことに当然なことといえるかも知れない。しかし振りかえって考えてみるに,どんな指導法をとったにせよ,実際の授業の中には,必ず音声面の指導が一程度の差はあれ一含まれている。発音練習もなし,範読もなし,個人読みもなし,英文の暗礁もなし,などというような授業がもし現実におこなわれているとしたら,それは100万年前の怪物が,実際にわれわれの目の前に現われたくらいに,不思議な出来事であろう。このことは,近代の言語学者たちの理論にもとづく説明や支持をあらためてまつまでもなく,われわれ教師自身が,もはや音声面の指導をぬきにした英語指導はありえないと一少なくとも心の中では一強く感じている何よりの証拠ではあるまいか。

 また考えを転じてみよう。もし,われわれが日本の生徒に英語を教えるのではなく,外国の生徒に目本語を教えるとしたら,先ずどんな手順で授業をすすめるであろうか。おそらく目本語について,いろいろと理窟を一かりに知っているとしても一のべるようなことはせずに,比較的易しい言語材料を用いて,口頭の練習から・入り,出来るだけ日本語そのものを教えるように努めるであろう。この方法は極めて常識的ではあるが,結果的には,科学的な言語観にのっとった指導法と方向を一つにするものなのである。

 2 明治の初期に英語教育が,わが国の公教育の中にとり入れられて以来,その指導のあり方について,いろいろの論議がなされてきたが,そこに底流する二つの考 えかたは、”実用面”を重んずるか、それとも、”教養面”を重んずるかであった。しかしこれらの論争を行っている人々でも、四技能(聞く・話す・読む・書く)のあることは認めている。しかもそのうちの一技能だけを発達させるべきだという人はだれもなく、みな四技能の調和のとれた発達を願っている。そうだとすれば、論争の問題は起こらないはずであるが、論争はなお続いている。この論争の原因は、教材または教材の取り扱い方にあるのであって、現在では、もはや本質的な問題ではないといえよう。

 3 四技能のうち「読む」ことについての研究や指導 は,ある程度の効果を上げているが,他の三技能、とくに「聞く,話す」については,まだまだ期待されている結果が得られていない。正しいリズムと抑揚をつけたproductive readingには「話す」能力が不可欠になる。指導要領にも「聞くこと,話すことができるようにさせる」とあるが,"それは聞きおく・というのでは、決して効果はあがらない。ここに教師の自覚と工夫が必要になってくる。

 4 英語を聞かせないで,どうして聞くことの力がつくであろうか。話すことについても同様である。幸い、現在ではテープレコーダーの使用は常識になっており、LLの設置についても真剣な討議がなされ,すでにその活用の段階に入っている学校もかなり見うけられる。これらの教育機器の活用については,今後とも多面的な研究をつみかさね,実りあるものにしなければならないが,ともかく生徒達が従来にくらべ,比較にならないほどnative speakerの音声に接していることh事実である。このことを考えに入れるとき,われわれはもっと生徒に「話す」機会を与えるように指導の計画を工夫すべきであろう。

 5 構造言語学が英語教育に果した貢献は大きいが、そのうち最も大きなものは,やはり教材の編成と言語学習理論にかかわるものであろう,即ち,(1)語いよりも音組織と文法構造に重点をおき,(2)理解面と運用面に対する材料を区別し,(3)母国語と外国語との科学的分析と対比の上にたって,教材は作成されるべきだと考え、実際の教授・学習にさいしては,oral approach の論にもとづいたmim・memやPattern practice の指導技術を提唱している。そして「聞くこと、話すことができるようにさせる」という目標を遂行するためには、どうしてもこれらの観点に立った指導法を活用し発展させていくことが必要ではなかろうか。

 6 1957年に Chomsky が(transformational)generative  grammar を発表して以来、生成変形文法の研究も盛んになり、その成果を英語学習の中にもとり入れようとする努力がみられるが、これもまた結構なことだと思う。ただ音声面をぬきにした英語学習はりえないということだけは心に銘記しておきたいものである。generative grammar も oral approach も共にそれぞ


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