福島県教育センター所報 第2号(S46/1971.8) -010/023page
第4図のように実体顕微鏡による方法では視野が広く全体的な結晶の成長の様子が非常に鮮明である。しかし各校の所有台数が少ないのでグループ別の観察は困難である場合が多いので解剖顕微鏡を利用するのも一策である。
c 偏光顕微鏡による観察
偏光顕微鏡のステージにシャーレをのせ、最低倍率でしかもクロスニコルで観察すると消光位の違いにより鉱物の輪郭が明瞭である。しかし視野が狭いので全体的な組織を理解するのに困難な場合もある。
d O・H・Pによる観察
第5図のように二枚の大型の偏光板の間にシャーレをはさみ、これをスクーリンに投影する。
この方法では多数の生徒に同時に提示することができる点できわめて効果的である。
しかしながら偏光板を通しているためスクーリン上の画面が、やや暗いのが難点である。もちろん、偏光板を使用せずに投影しても効果は期待できる。
以上のように種々の観察法が考えられるが、それぞれに長所、短所があるので指導のねらいに応じて適宜利用するようにしたいものである。
4.おわりに
地学現象は特に複雑な要素を含んでおり、そのためにだけ焦点をしぼり探求することが要求される。そして時間的な経過による変化や、静的な現象を動的に把握することや、思考過程で飛躍する部分を補う意味でモデルが効果をあらわすのである。
モデル実験は単にモデルとしてでなく、この場合は火成岩の産状や組織の違いを理解する原因と関連させたところにモデルの意味が生ずるわけである。
一方、モデルにはそれ自体の現象と共通する面を有すると同時に異なる面も多く含まれている。教師は指導の場においてこうしたモデルの持つ限界をじゅうぶんにふまえ、再び自然現象へ目を向けさせ思考を定着させ、更に発展し得るのうりょくを身につける努力が必要である。
5. 参考文献
(1) 新しい理科教育−理科教育現代化講座資料(1971)、文部省
(2) IPSの実験、探求の過程とその実験、(1970)、共立出版株式会社
(3) 中学校指導書、理科編、(1970)、文部省
高校教材
カイコを使っての実験
第2研修部 大 原 正 男
はじめに
科学技術の高度の発展がわれわれ人間社会を一変させ、進学率の上昇が高校教育を能力、進路に応じた多様化を要求し、高校の理科教育も中学理科教育との一貫性を考慮しつつ、探求の過程をとおして科学的方法を身につける教育に大きく変わろうとしている。その中で生物教育は物質交代とエネルギー交代という一本の軸の上に体系化されているので、生命現象を分析し科学的思考力の育成をめざす実験実習が必要とされる。そこで問題となるのは実験教材である。最近、産業の発達による工場進出、農業省力化による農薬使用などにより、とみに動物実験教材が減少している。そこで計画的に増殖制御でき、多面的な生命現象探求の実験も可能で、最近人工飼料などの研究で特別な時期を除いていつでも入手できるカイコがみなおされて来た。今回はその過去をつかって血糖量の恒常性、核酸の実験をとり上げてみた。
実験
I カイコの外部観察と内部解剖
・ねらい 実験II、IIIの予備実験ととして実施し、個体の構造と機能の関係と、生活環境の適応をとらえさせる。 ・準備 5令後期の幼虫、クワの葉
・器具 解剖用具、解剖顕微鏡、ルーペ、シャーレ、光学顕微鏡、スライド、カバーグラス
・薬品 カイコの生理的食塩水(0.85%NaCl)細胞分離液(0.5%酢酸、水、グリセリンンを9:4:1に混ぜる)酢酸カーミン、エーテル(麻酔用)
・ 外部観察 桑を食べさせながらルーペなどを使って、次の点を観察させる(姫蚕と型蚕を半々に用意するとな