福島県教育センター所報 第3号(S46/1971.10) -004/025page

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用が行なわれていないこと。

○使用される年表・歴史地図は,掲示用の総合年表や歴史地図,あるいは,教科書の巻末年表や歴史地図の利用にとどまっていて,授業に必要な年表や歴史地図を教師自身がくふうして作り,これを利用していくことがたりないこと。

 など,歴史学習のあり方からの発言が各種の会合で以前から何回となく論議されている。しかし,これらについて深い研究がなされず,授業への実践化が徹底していたいというのが残念ながら現状ではないだろうか。
 思うに,これらの原因は,つきつめて考えると実はもっと根元的なもの,すなわち,「歴史学習における年表と歴史地図指導の意義は何か」の問に対して,明解な解答を持っていないという不勉強さにあるのではないかと思うのである。


2.年表と歴史地図指導の意義

 歴史学習で,年表・歴史地図を指導することは,どんな意義をもっているであろうか。これを考えるのに,まず,歴史学習のねらいを明らかにしなければたらない。
 歴史学習において,生徒の身につけさせておくべき基礎的なものとして,4つの要素が考えられる。

(1) 歴史的事実・事象を正確には握させること。
(2) 歴史的事実・事象の移り変りや事実・事象と他の専実・事象との相互関係を総合的に理解させること。
(3) 各時代の特色や歴史上における意義,影響を考えさせること。
 そして,(1) 〜 (3)についての理解を深め,望ましい歴史的態度と能力を身につけさせるための手順や方法として
(4) 年表・地図その他の資料を活用するカを身につけさせることである。

 これをさらに分析し,年表と歴史地図の活用が必要と思われる部分を洗い出し,整理してみることによって,年表と歴史地図指導の意義を考えまとめようとしたのが次の表である。

歴史地図指導表

このように分析して考えてみると,年表と歴史地図を活用することは,歴史的理解を奥行深く身につけさせるのに有効な一方法であるとともに,単に,年表と歴史地図が歴史の理解を助けるために使われるだけでなく,歴史の事実を正確には握し,諸事象を歴史の中に正しく位置づけて,その前後関係を考えさせたり,歴史的な出来(時間・空間的)や後世への影響を考えさせたりすること。さらに,その事象が現在の状態になるまでの歴史的経過を考察させたり,生徒が諸事実・事象に対していだく誤りを修正したりしながら,諸事象を公正に判断しようとする態度と能力の基礎を養うために・必須不可欠のものであることがわかってくる。


3.おわりに

 以上の意義をふまえ,年表と歴史地図の指導観を確立し,指導の計画化を図り,1時間1時間の歴史学習において,年表・歴史地図の読みとりと作成についての基本的な知識を習得させ,技能を訓練しながら活用を図っていくことが,前述の原因除去となり,年表・歴史地図指導のねらい達成につながるものと考える。


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