福島県教育センター所報 第3号(S46/1971.10) -006/025page
二つの集合 X ,Y あって,X の個々の元に Y の元を 対応させる規則 f を関数という。 ・・・ ( II )
と表現できる。この定義にも現代化の立場からみると間題がある。( I )の定義でも,「 y の値がただ一つ定まる」とした教科書があるように,現代では従前の一価関数のみを関数というのである。たとえば,
y = a x ・・・(1) x 2 + y 1 = 1 ・・・(2)
で, (1) は関数というが, (2) は二価関数で,現在は関数とはいわない。( II )の定義では, X の一個の元にいつも, Y の一個の元が対応するとは限らない。即ち「一対多」の対応も含まれていると見るべきである。従って「一対一の対応」とするためには,
「Yの元を対応させる規則 ƒ 」を
「Yの元を一つずつ対応させる規則 ƒ 」
としなければならない。このようにすると「一意対応」だけが関数であることになる。こうすると,現代化の立場での一般的な定義となってくる。すなわち
二つの集合 X ,Y あって,X の一つの元に Y の元を一つずつ対応させる規則 f を関数という。 ・・・ ( III )
となる。ここで X ,Y の元は "数" のみでないから,関数という表現は似つかわしくない。これは従来の関数はたかだか実数のみを扱った慣習に従っているためで,数のみを対象とするのではたいことを強調する意味から,写像という語を用いているのもあるが,写像も関数も同じ意味であると解してよいのではたいだろうか。( II )の定義では多価関数も関数と認めるに対して,( III )の定義では,一価関数のみを関数と定義している。しかし多価関数も,値域を適当にとり,その分枝を考えるならば,各分枝で一価関数になるようにすることができるので,高校までには,( III )の定義をふまえて,関数の指導をすべきであると考える。小学校3年生から,指導要領に「関数」の用語が見えるようになって来た。関数的見方考え方は現在の数学教育の中核をなすものである。各学年に応じた,明確な定義をふまえ,その発展の見通しを立てた関数指導であるべきものと思う。
中学校教材
気化熱の測定実験と指導
第2研修部 花沢 繁
物質の粒子性は,エネルギーとともに第一分野の最も基本的な概念としてとりあげられている。
物質が粒子からできているというモデル形成のためには,いろいろな実験や観察が必要であり,それを有効にモデル形成と結びつけるには,実験方法や材料などに多くの検討がなされなければならないであろう。
粒子モデルの形成過程の一例を考えてみると,物質の混合による体積変化や結晶の規則性などから,物質をつくる量小単位としての粒子モデルを考え,物質の三態変化に粒子モデルを適用して,静的な粒子モデルをつくりあげる。次に拡散,ブラウン運動などの観察から得た情報を通して,粒子モデルに運動要素を加え,静的な粒子モデルを動的な粒子モデルに修正する。更に融解熱,気化熱 (粒子間の距離とポテンシャルエネルギー) などの測定から,エネルギー概念を加味した動的モデルをつくりあげ,素ぼくな粒子モデルを形成する。
この一連の粒子モデル形成の学習は,原子,分子モデルヘ,更に電気的に修正された粒子モデル(イオンモデル)の基礎として重要な役割りをもつものである。
モデルは、できるだけ簡単,素ぼくなモデルから導入することが重要であり,生徒がモデルをつくったり,修正したりする必要感を感ずるようにするためには,適切な観察や実験を用意することが必要である。ここでは,エネルギーの考えをとり入れた動的な粒子モデルにまで高めるための気化熱の測定実験をとりあげ,実験方法の検討,実験を通しての指導についてふれてみる。1.実験方法について
この実験では,容器の熱容量に対する配慮や熱の逸散を防ぐなどのくふうが必要となるが,簡易な方法で,文献値に近い値を得るという点について検討し,つぎのような方法で実験を行なった。
[ 準備 ]
・500cm 3 ビーカー(フラスコを温浴させるため)
・100cm 3 丸底フラスコおよび温度計とガラス曲管をつけられるよう穴を二つあけたゴムせん。
・透明ビニール管 (ガラス管に合う径のもので15cmと5cmの長さのもの各1)
・径1cm高さ10cmのU字管およびとれに合うコルク栓とガラス曲管をつけられるよう穴を一つあけたコルク栓
・ガラス曲管2 (一つは曲った部分から6〜7cmの長さ