福島県教育センター所報 第3号(S46/1971.10) -019/025page

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教育相談用語解説

登 校 拒 否

研究相談部  伊 藤 武 司

  登校拒否 とは,健康を害したとか,家庭のある事情のためとかいう客観的に認められる理由はなく,ただ本人の心理的理由から,学校へ行きたがらない状態をいう。
  登校拒否 を大別すると,つぎの五つの型がみられる。

1型  神経症的なもの(学校恐怖症)
2型  精神障害によるもの(分裂病,自閉症)
3型  環境異常による非行形式のもの(怠学)
4型  知的,身体的異状によるもの(劣等感)
5型  その他の登校拒否

 登校拒否の鑑別的特質をつぎにあげる。


1.登校刺激への反応

 登校拒否の初期には,親や教師は原因をさがし,わからないままに,大した原因ではないと感じ,その除去を約束して登校を説得する。(説得,干渉,哀願,おどしで登校させようとする努カを登校刺激という。)

1型   腹痛,頭痛を訴える。フトンにもぐり,家具にしがみつき,便所にかくれ,山中にとん走したり一言もしゃべらないなど,恐怖反応や逃避反応で登校を拒否する。
2型   周囲の環境全体に関心を失っているか,減退しているので,特有の反応を示さない。
3型   相手次第で違った反応を示す。強い相手(先生・おとな)には頭をかきながら従うが,弱い相手には乱暴な口をきいて反抗する。
4型   不安も少ないし,反抗もみられない。共感的態度で接すると登校する。



2.情緒水準の変動

1型   登校時間を中心に,午前中は抑うつ的,無気力的,かん黙,対人接触の回避傾向がみられる。午後特に夕方になると,自発的または,説得されて翌日の登校準備をするが,朝になると「病人」になってしまう。中には週中にもみられ,特に月曜日は不調で,土曜の午後,日曜には,比較的安定し,いつとも変らないほど,元気になる。
その他の型  は,不安や恐怖が前面にでることは少ない。



3.登校拒否中の行動

1型  学校にいくがうちにいるかの二者択一的行動を示す。登校への圧力がないと遊んでいる。
2型  家庭にいて,何するでもなく無為に過している。
3.4型  親に登校していると思わせ,教師には家にいると信用させて,町や野原で自由に遊びまわっている。(いわゆる山学校)



4.学校に対する意識と態度

1型  登校したいが,心理的葛藤のため学校にいけない。
2型  関心を喪失している。
3型  学業不振,対人関係悪く,勉強嫌い,学校嫌い,学校の権威に反抗的態度をとる。
4型  劣等感から学校を逃避している。



5.処置

1型  カウセリングや,心理的治療,遊戯治療など
2型  医学的治療が優先
3型  環境の操作を主としたケース・ワーク
4型  特殊学級や養護学校への就学指導



6.治療

第1期 心気的時期  (頭痛,腹痛,不安,疲労感)
  親の態度の操作,(あせらない,励まし)担任との連絡,面接,遊戯,心理劇など
第2期 攻撃的時期  (乱暴,文句,絶食,取引など)
  相談機関における面接治療,通所指導病院,児相などに収容または一時保護、親への助言。
第3期 自閉的時期  (暴カ,取引,閉鎖的)
  親の協力(登校拒否児の扱い方)特に父親の理解と協力はこの種の障害の改善に不可欠である。



7.考察

 登校拒否の分類については,いろいろな意見があるが,ここでは,教育相談事典に基づいて大別した。ケースによっては,外来治療,収容治療,訪問指導も必要であり,関係諸機関との緊密な連絡によって大きな効果をあげ得るものと思われる。


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