福島県教育センター所報 第4号(S46/1971.12) -008/025page

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令甲第48号「小学校ニ於テ備フヘキ表簿ノ種類及其保存期限」)のことである。そこで,編さん項目,記載内容をめぐる審議の状況および記載項目の統一以前までの過程を概観してみる。

2. 初期の学校沿革誌

太政官布告第40号(明治12年9月29日)の第41条によると「府知事県令ハ管内学事ノ実状ヲ記載シテ毎年文部卿ニ申報スベシ」とある。これをうけて本県は,14年6月9日に文部卿に送付した13年度学事年報目録がある。

(学第4号明治14〜16年「官省上申進達」)
すなわち下記のようなものである。
1 学事統計表(付録二葉) 甲乙2葉
1 公立学校表 2冊
1 私立学校表 2冊
1 各種学校種別表 2葉
1 専門学校種別表 2葉
1 公学金出納 表・学資寄付(付録4葉) 2冊
公学校所有品
1 学事景況調 2冊
1 郡山農業学校諸規則 2冊
1 医学校職制並事務章程 2冊
1 医学校諸規則 2冊
1 学務委員理事則 2冊

こうした公文書としての学事年報の作成と呼応し,「町村立小学校学事表簿様式」(14年県丁8号)あるいは「学事諮問会規則」(19年10月)「学事年報取調要項」(同年10月)等の規定と相まって,学校沿革誌と学事年報とは相互補足的な関連を保持しながら整備されていくものと考えられる。具体的には,16年2月,文部卿松方正義が文部省で教育沿革史を編さんするので「県庁及学校所蔵ノ旧記類其他(中略)古老ノ口碑ニ資リ学制領布前ニ係ル左記ノ諸項ヲ取調本年八月限可差出此旨相達侯事」(日本教育史資料一)と命じ,藩内学事上の諾制度をはじめ,士族・平民の子弟教育方法等多くの調査項目をあげ,しかも短期間での報告なので,各学校の苦慮は大きかったと思われる。したがって東白川郡社川小所蔵の「自明治8年6月至明治9年8月,堤小学留記」「自明治9年11月至12年6月,寺山小沿革誌」のように,日記の形式をとっているものは,学事年報規定等以前のもので,きわめて貴重な資料である。「学校沿革誌 ニ日記調製概則」(明治9年7月千葉県乙第198号)では「(前文略)学校沿革ノ史乗ヲ編集シ其起立ノ因由ヲ後世ニ伝ヘサルヘカラス(中略)自今各公立学校ニ在リテハ必ス沿革誌 ニ日記ヲ備ヘ従前ノ沿革将来ノ経歴ヲ記録シ以テ他日ノ徴考証拠ニ供スヘシ(後略)」として前文でその趣旨をるる説明し,七項目の細則をあげている。こうした布達は,本県の場合はなかったようである。

3. 教育会の動向

耶麻郡千里尋小では「明治13年6月,学校沿革誌ヲ調制ス」(明治24年6月同校沿革誌)とあるが,県内各校の実質的な着手の状況は,20年以降である。当時は,各校・各郡ごとに独自の項目を設定し,学事年報形式あるいは文部省の「学制沿革取調要目」をミックスした編さん項目である。

備付,保管の義務がなかったことは前述したが,資料を整理し,たんねんに毛筆で書くだけでも容易ではなかった。そのうえ,「小学督業職務規程」(明治21年1月20日県令甲第12号)「小学督業設置準則」(同年2月20日県訓令甲第65号)による督業の巡視で諸簿冊の検閲を強化し,学事年報については,訓令甲第149号(19年11月)を改正し,小学校から戸長役場への提山期限の1月10日を厳守するよう通達している。(県訓令甲第201号21年12月25日)

さて,各校独自の編さん形式を郡として統一した項目にすべきだとする気運が高まってきた。耶麻郡教育諮問会(23年7月27日,喜多方高小)において,耶麻郡長は郡下各小学校長,首坐訓導,各町村長を集め,五件について諮問しているが,その中に「沿革史編集ノコト」が.ある。これについては次のように決定したと報告している。(福島私立教育会雑誌第60号)

沿革史編纂ノ件ハ項目取調委員五名ヲ挙ゲ,九月尽日迄ニ復申セシメ,郡衙ニ於テハ委員ノ取調ベシ草案ヲ調査シ,之ヲ訓令シ各校ハ六ケ月ヲ期シ,創設ノ始メヨリ本年三月迄ノ沿革ヲ取調ブルコト尚以降ハ年々其年ノ沿革ヲ編纂スルコトトナレリ

翌24年1月,郡訓令甲第2号「沿革史調制スヘキ件」を制定し,金田小(24.6),千里小(24.6),山田小(24.7),塩川小(24.8)等郡内全校の編さんをみている。

この山田尋小(現熱塩小)の沿革誌の前書きに,経緯を次のように述べている。

今本校沿革誌ヲ編纂スルニ臨ミ其参考トスルヘキ記録ナシ,啻二存在スルモノハ不整理ナル帳簿一二アルノミ,故ニ創立以来明治七年頃迄テハ拠ルヘキモノナキヲ以テ大ニ之ヲ苦慮シ西走東馳之ヲ尋問スルモ敢テ確呼タル説ナシ,確タル説ニ非サランハ之ニ信ヲ置ク能ハス信セサレハ従テ之ヲ記録スル能ハス故ニ其一二存在スル処ノ帳簿ニ根拠シテ其概略ヲ記載ス

この辺の実情は,他郡においても共通する問題であった。なお前出校の項目は,(1)沿革,(2)教則,(3)諸規則,(4)職制,(5)生徒,(6)職員,(7)試験,(8)賞与,(9)学事関係役員,(10)経済,(11)備品,(12)付録という項目順に統一されている。

こうした先進郡の動向について,県教育会の機関雑誌は初めて23年9月号でとりあげ,「学校ニ於テ其校ノ沿革並ニ諸種ノ事柄ヲ取調べ之ヲ後々ニ伝フルコトノ必要ナルハ(中略)各小学校長若クハ首坐訓導ハ是非トモ沿革誌並ニ年報ノ調整ニ従事セザルベカラズ(後略)」(同号「雑報」)と主張し,資料の収集,編集の着手を急ぐよう呼びかけている。と同時に,模範的なものを参考とし


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