福島県教育センター所報 第5号(S47/1972.3) -005/025page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

中学校とも肯定,否定の反応のいずれもが自己中心的な考えにたっていることは明らかである。それだけにわるいところが多いとの考え方は,中学校の男・女子,高校と学年が進むにつれて,ずっと批判的になっている。

また一方どう考えたらよいかわからないの意見が10%前後あるし,学年の低い者ほどこの考えが多い状態である。農村,都市の差はあまり目だたないが,高校,農村男子の43%と都市の女子46%がわるいところが多いと答えているのは環境と指導の問題がありはしないか。悪条件が強すぎるきらいがあろうが,環境的条件がよくなれば,やがて解消することもあるであろうが,学年的発達段階を知ることがより必要であろうと思う。

4. 今の社会の特徴

子どもは,今の世の中をどうとらえているか,都市と農村という環境の中で,それに順応し,それに耐えて生き育ってきたが,農村,都市の地域差はあまり感じられない。

子どもは,今の世の中をどうとらえているか

現代の社会が交通の発達とマスコミの影きょうにより,横につながる感がする。小・中・高とも公害や交通事故が心配というのが最高をしめており,その反面生活が豊かで安心して生活ができる,自由で楽しいというパーセントも20%前後あるのは,この時代の進歩的な生活態度があり,その見方,考え方が現実を生きていく際の一つの指針となっていると思う。反面たえず若い人の服装やおとなの生活のしかたに問題があると考えている者が,学年が進むにつれて少しずつ増加し,現実の動きを凝視し,時代の進んでいく方向をみつめ検討しているという状態もうかがわれる。マンガやエッチな映画が多いと混乱を認めるものは,高校生が小・中生より多く,特に女性は男性より感覚的なことには敏感である。

よく考えあわせると人間生活というのは,いつの時代においても前進を続け,進化していくものであるが,反面危険におびやかされる。そうした中で社会の前進に自分から参加していく態度でありたいと思うし,そこに人間としての真の姿も感受されるであろう。

5. まとめ

「社会認識における子どもの実態」を調べてみると,子どもたちが本来もっている「何故か」と追求する欲求は,学校,家庭,社会において必ずしもじゅうぶんに育っているとはいえない。

未来を開く豊かな教育をめざして,社会に対する正しい認識のしかたも成長しているが,生涯教育にうらずけられながら,型にはまらず,人間のもつ可能性を伸ばしていかなければならないであろう。

周囲の環境にすぐ影響されやすい体質よりも,自己の理想を育て,世間体や義理人情にこだわることなく,個人の尊厳を重んじ,真理と平和を希求する人間的な成長が期待されよう。

学校教育は学校内外の社会生活の経験に基づき,人間相互の関係について,正しい理解と協同,自主および自律の精神を養成することは論をまたない。

どのような困難に遭遇しても,現実に流されたり,その目標を見失うことなく,心身ともに健康な人間を育てる方法を具体化すべきであろう。

今回は,社会認識のうち,
[1] 同常生活ですきなこと。
[2] 社会のみかた。
[3] 社会の特徴
をあげるにとどまったが次回には,性文化に関する項をとりあげることになろう。

最後に一言したいことは,社会について,広く深い理解と健全な批判力を養い,個性の確立につとめ社会において果さねばならない使命を自覚させ,現代の社会に適応し,実践力のある有為な人間として育つことがのぞまれよう。そして学校における教育の成果をさらに発展拡充させて,英知に基づく,豊かな情操,公正な判断力を培かっていくことがたいせつなことではなかろうか。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。