福島県教育センター所報 第5号(S47/1972.3) -019/025page

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神経症

研究・相談部  伊藤 武司

神経症とは ,心理的原因(心因性)によって,心理面や身体面に固定してきた機能的(非器質性の)障害をいう。(教育相談事典)
精神病と異なるのは,人格の統一そのものは失なわれることがないし,自分の状態がよくないという「病感」あるいは「病識」が異常に強いということであろう。

1. 特徴

(1)  幼児期 では,母親のもつ感情的雰囲気が,直接幼児の心に影響して神経症の原因をなすことがある。

(2)  学童期 では,父母を中心とする家族全体の人間関係がおりなす家族内の雰囲気が影響を与える。

(3)  年長児 になると,兄弟間の嫉妬心,競争心なども神経症の心因をなしていることもある。

(4) 神経症状を おとなは ,不安・悩み・強迫観念・抑うつ感情などの精神的病訴として表現するが, 子どもは 自已の苦痛を客観視して,相手にわかるように訴えたり,説明したりすることができないで,病気の苦痛をそのまま直接に表現する。例えば,不安感や感情抑うつがあれば,ただむやみに泣くとか,怖れるという表現しかとらない。不満や敵意があれば,ただわけもなくがむしゃらにかんしゃくを立てたり,暴れたりするよりほかに表現のしかたを知らないようである。

2. 原因

(1)  突発的な変化


突発的に生じる状況の変化により,激しい情動の変化をひきおこすことがある。
例えば  ・肉親者の死亡,急病,別居
 ・激しい叱責,おどし
 ・病気による苦痛・手術
 ・急激に不安を抱かせるような事態,転校

(2)  持続的な生活葛藤状態


神経症の発生には,むしろこの場合の方が重視される。
例えば  ・家庭内人間関係(養育態度)
 ・学校その他の生育環境上の問題などからくる葛藤

(3)  性格因としての原因


神経症にかかり易い性格
例えば  ・神経質,過敏,白信欠乏,虚栄的
 ・完全主義,感情未成熟

3. 症状

(1)  精神神経症 (精神症状を主とするもの)

[1]不安状態・落着きない行動,乱暴,かんしゃく。
        ・息止め発作,夜驚,頭痛,腹痛
        ・登校拒否,非行につながる。
        ・悪心,呼吸困難,頻尿

[2]心気状態・健康なのに疼痛,不快感,違和感
        ・頭痛,耳なり.眼がチラチラする。
        ・悪心,胸内不快,胃部不快感,下痢
        ・便秘,食欲不振,筋肉痛,注意散慢
        ・四肢倦怠感,不眠,記億力減退感

[3]強迫状態・疑感癖,質問癖,接触恐怖
        ・不潔恐怖,尖端恐怖,赤面恐怖
        ・対人恐怖,高所恐怖

[4]ヒステリー状態
        ・けいれん,チック様運動,どもり
        ・蒼白,悪心,発疹,嘔吐,下痢

(2)  神経質性習癖 (行動面に反復出現するもの)

[1] 食事―偏食,大食,小食,拒食,神経性嘔吐
[2] 排泄―遺尿(昼,夜)漏便,頻尿
[3] 睡眠―夜なき,夜驚,寝言,夢遊
[4] 言語―幼児語,構音異常,緘黙,どもり,早口
[5] 身体―チック,爪かみ,指しゃぶり
[6] 性 ―自慰
[7] その他―略

(3)  精神身体症 (身体面に現われた機能障害の傾向)

[1] 学童前期―気管支喘息,嘔吐,夜驚,チック
[2] 学童後期―片頭痛,頻尿,チック,神経性下痢

4. 考察

(1)診断の際,原因がどのような心理機構であるかを明らかにすることが必要である。

(2)人格は過去の生活史の中に形成されることを考え生活史をくわしく調べる必要がある。

(3)元気づけや環境調整などの支持療法,表現療,遊戯療法による治療,体系的理論による治療,あるいは医師,専門機関との協力による薬物・心理療法の併用も神経症治療に効果をあげていることも留意する必要があろう。



図書コーナー

教育相談室(小泉英二編著)

研究・相談部  伊藤 武司

教育相談 については,必ずしも固定した定義があるわけではないが,一般には,真の人間理解を通して,ひとりの人間の自已実現への援助を行なう活動であるといわ


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