福島県教育センター所報ふくしま No.6(S47/1972.6) -002/025page

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教育内容・方法に関する研究,資料提供

−小・中・高,教材研究を中心として−

福島県診断標準学力検査実施結果の分析・考察とその対策について

国語料「読むこと」

 第1研修部  松  浦  淳  一

I はじめに
 昨年,私たちは,「福島県診断標準学力検査問題」(小学校1年〜6年)を作成し,36校から約6,200名の標本を抽出して,標準化のためのテストを実施した。ここでは,このテストの結果,正答率のとくに低かった問題点と思われる指導事項をいくつかとりあげ,それを分析考察しながら,その対策について考えていくことにしたい。なお,問題作成にあたって,留意したおもな点は次の通りである。

1診断的な学力検査問題としての性格上,それぞれの学年で学習した学力の実態が診断的にとらえられ,次の段階での指導督料として,役立つように配慮した。
2 テスト領域の設定にあたっては.ペーパーテストでの診断という限界上,やむをえず「読むこと」と「書くこと」の2領域に限定し,「聞くこと・話すこと」については除外することにした。
3 「読むこと」・「書くこと」の両領域については,1年から6年までの指導内容を系統的に分類整理をして,問題作成の基準にした。
4 「読むこと」と「書くこと」の問題の割合いは,指導の際の領域比重を参考にして,55:45をめやすにした。また,問題総数は,低学年100問,中学年120問,高学年130問程度を標準にした。

 II 「読むこと」についての概観
 次の表は,1年から6年までの「読むこと」についてのテスト結果を,「文字」「語句」「文・文章」の領域別正答率,および領域別平均正答率,ならびに学年別平均正答率に分けて表わしたものである。
学年\領域 文字 語句 文・文章 学年平均正答率
1  年 84.4(%) 68.7  62.1 71.1
2  年 84.7 65.3 71.5 73.8
3  年 62.7 61.0 57.4 60.4
4  年 59.0 58.0 54.1 57.1
5  年 69.7 66.8 53.7 63.4
6  年 60.9 65.6 64.7 63.7
領域平均正答率 70.2 64.2 60.6  

 この表で概観すると,3領域の平均正答率は,「文字」「語句」「文・文章」の順で低くなっている。これは,読みとり作業での抵抗度が,「文字」よりは「語句」,「語句」よりは「文・文章」と,しだいに高くなっていくことから考えて当然であろう。また,学年ごとの平均正答率をみると,低学年の1・2年が,ともに70%台でもっとも高く,次は5・6年の63%で,中学年の3・4年は,もっとも低い60%と57%になっている。さらに,3・4年の中でもめだって悪いのは,領域平均正答率との対比から,どちらも「文字」の領域であることがわかる。

 ここで,3・4年の正答率がなぜ低くなっているのかを考えてみると,おもな原因としては,学習量が増大し学習内容が複雑こなっているのに対して,指導計画や方法が,じゅうぶんに対応していないのではないかということが考えられる。学習量の増加の傾向について,例えば漢字を例にして考えてみると,学年別漢字配当表の2年の段階では,既習漢字+配当漢字+繰り下げ漢字の合計が,46+105+70=221字であるのに対して,3年では151+187+78=416字と約2倍になっている。また,4年での配当漢字数205字は,6年間を通してもっとも多く,当用漢字別表に掲げられたいわゆる教育漢字の23%にあたる分量であるが,それに対して,5年では194字22%,6年では144字17%としだいに減っていく。しかし一方では,理解力の発達は中学年がもっとも著しいという各種の研究報告があり,すでにそのことは定説化しているといってもよいだろう。であるからこそ,これらの学年では,学習量を大幅にふやしているのだと思われる。とするならば,やはり問題は,増大した学習量の消化のしかたにあるのではないだろうか。

 III 問題点の考察と対策
 さて,「読むこと」についての問題点をより明らかに


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