福島県教育センター所報ふくしま No.6(S47/1972.6) -003/025page
するために,各学年で正答率のもっとも低かった指導事項を,二つずつ拾ってみると次のようになる。
1年 文・文章 ・場面や事物を読みとる 47.6 語句 ・同義語がわかる 53.2 2年 語句 ・同義語がわかる 53.2 文・文章 ・指示語の指示内容をつかむ 56.1 3年 文・文章 ・心情を読みとる 41.8 文・文章 ・文章の要点を読みとる 47.2 4年 文・文章 ・段落の要点をとらえる 22.3 語句 ・慣用語句がわかる 41.0 5年 文・文章 ・文章の要点を読みとる 31.8 文・文章 ・文体のちがいがわかる 40.6 6年 文字 ・辞書の引き方がわかる 29.6 語句 ・文脈の中で語句の意味をつかむ 33.4 これでみると,まず3・4・5年とも,そろって「文章の要点を読みとる」「段落の要点をとらえる」という,要点は握の項目に落ち込みがみられる。このことから推論していくと,読解の中心目的である主題や要旨のは握ということは,まだまだ定着にはほど遠く,依然として読解指導の中心課題であるということが言えよう。読解能力は,いうまでもなく,一語彙力・文法力などから解釈カ・要約カなどにいたる,各種の基礎能力の機能を総合したものである。したがって,この分野を向上させていくためには,各種の言語要素について正しく二理解させた上で,さらに主要な経験要素を確実なものにしていかなければならない。具体的には,漢字の音・訓の読み分けや同義語・複合語・慣用語の理解といったようなより基礎的な学習の上に,指示語・接続語の機能を正しくたどりながら文脈に則して読むとか,段落ごとの中心語句・中心文を押えた上で段落相互の関係を見きわめるとかいった,ごくあたりまえの作業を操り返し積み重ねていくことがたいせつである。
次に目につくのは,1・2年の「同義語がわかる」4年の「慣用語句がわかる」6年の「文脈の中で語句の意味をつかむ」などの語句の陥没である。これはマスメデアの中心が,子どもたちの世界でも,活字を主体としたものから,映像を主体としたものに変化してきたこととも関連がありそうであるが,ともかく,漢字を主とした語句が読めないか,または読めても意味がわからないわけで,語彙力が低いことを示している。この対策としては,低学年ならば日常の生活語を中心に,正確な読み方や正しい使い方についての用法・用例の指導がたいせつであろうし,また高学年ならば,使用頻度数の高い語句を重点にして,その語句に関連のある同義語・同類語・反対語・複合語などを,構造的に与えていくことがたいせつである。もちろん,こういったことのほかに,いつどこでどのようにして,反覆して学習させるかということと,子どもの発達段階から考えて,過重負担にならないように配慮することなども必要であろう。
「書 く こ と」
第1研修部 石 井 喜美雄
1「書くこと」の概観
学年\領域 文字 語句 文・文章 平均正答率 1 75.4 67.4 66.2 69.7 2 76.8 79.3 65.1 73.8 3 52.9 69.1 61.3 61.1 4 46.6 59.8 52.1 52.8 5 54.0 59.4 66.1 59.8 6 51.6 86.6 63.8 67.4 平均 59.6 70.3 62.4 64.1 学年別領域ごとの正答率を示すと上記の表になる。正答率の面からみると,三領域のなかで,もっとも低率なのが文字の領域になる。この領域の内容は,漢字の書写に関するものであるから,漢字を書くカが劣っているという見方もできる。
低学年の文字の正答率が70%台であるのに,中・高学 年はいずれも50%台にとどまっている。中・高学年の正 答率が低い理由のひとつに,学年配当漢字数が,3年生 から急に増加し,4年生になると543字にもなる(3年 338字,4年543字,5年737字)ことがあげられる。
次に,正答率が低く,陥没点ではあるまいかと思われ るものを,学年別にあげてみる。(1)文 字
共通している問題点は,同音・同訓の漢字,形の似ている漢字を使いわけることである。
1) 1年 ・正しい筆順で漢字をかくこと。 2) 3年 ・同音,同訓の漢字を使いわけること。 ・正しい筆順で漢字をかくこと。 ・形の似ている漢字を使いわけること。 3) 4年 ・形の似ている漢字を使いわけること。 4) 5年 ・同音,同訓の漢字を使いわけること。 5) 6年 ・漢字を正しく書くこと。 ・同音,同訓の漢字を使いわけること。 ・形の似ている漢字を使いわけること。
(2)文・文章