福島県教育センター所報ふくしま No.6(S47/1972.6) -006/025page

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2 社会的な判断の能力
  この領域は,各学年ともに最低である。これを,1観察力,2思考力,3資料活用能力の,小領域でみると,4年・5年では1 3が劣り・6年では1 2 3のすべてが40%前後の低率を示して劣っている。

3 社会の成員としての態度
  この領域は各学年ともに正答率が高く,特に7社会的な心情は最高である。

(3) 論理的な内容に弱い
   設問について全体的にみると・一般に・機械的な記憶や単純な思考によっても答え得る設問についての正答率は高く,高次で論理的な思考を要する複雑な内容の設問になるにつれて,正答率が低くなる傾向を示している。これは,2の弱さにもつながるものと思われる。

(4) 歴史的内容に弱い
  一般に,歴史的内容の設問に陥没がみられる。特に,6年では,地理的,政経的内容の正答率が50〜70%と高いのに,歴史的内容となると20〜50%と低さが目立ち,例えば,安土・桃山時代の人物や事実を・地図を通して観察させる問題で,鉄砲の伝来した島の名と伝えた国の名を問うたところ,13.4%しか正答がなかった。

(5) うっかりミスが多い
  なかには,問いをよく読まないで早のみこみをしすぎたり,読みちがいをして反応したと思われる初歩的な誤りが意外に多かった。日常の指導で反省しなければならない点であろう。

3 問題点の診断と指導上の留意点

 すべての問題についての問題点をあげ,それを診断することは,紙面の都合でできないので,正答率が特に低く,各学年を通じて指導上問題があると思われるものだけを,概略的にとり上げることにする。

(1)社会生活の理解
  この領域は,「知識・理解」としてとらえてほしい。
1「総合的な理解」
この小領域が,各学年ともに劣っていることについては,情報はん濫の時代ともいわれる世相の反映が感じられる。すなわち,

● 子どもたちの,社会的な事実・事象についての知識量は多いが,いずれも断片的・百科知的で,それが体系的に理解されていない。
 これの指導については,次のようをこのぞみたい。

ア 網ら的なつめ込み指導をやめ・学習内容を精選し体系的に理解させるくふうを。
イ 社会的事象のなかから,原則的・法則的なものに気づかせる指導のくふうを。
例えば,新指導要領でもねらっているように,6年の「世界の国々」で,数多くの国々の生活をとり上げるよりも,熱帯,温帯,寒帯の代表的な国をとり上げ,それぞれの気候と人々の生活の関係の特色をは握させれば,他の国々の生活をこついては類推できるようになる。

 このように,自然環境と人々の生活,あるいは社会環境との関係などの事象のなかから,法則的なものに気づかせるように指導を,学年に応じたとり上げ方をしていけば,これは「物の見方・考え方」となって,後に続く学習へ,あるいは上級学年の学習へと転移するものと考えられる。

(2)社会的な判断の能力
 この領域の平均正答率は・各学年ともに最低であり,これを「観察力」「思考力」「資料活用能力」の小領域でみても,いずれも低さが目立つ。 これらの能力は,「みてわかり」「それについて考え」「その考えを深めたり裏付けたりするために資料を活用する」というようをに,結びついてはたらくもので,連鎖的に低さを示したものと思われる。

1 「観察力」
 各学年ともに,よく見れば簡単に見分けられるものを誤っている傾向が目立つ。 事実・事象を具体的には握したり・比較・対照しながらその特色に気づくなどの能力が劣っているのである。
いうまでもなく,「観察力」とは,ペーパーの上で育つものではなく,身近な事実・事象のなかで,数多くの場をふみながら育成される能力であろうが,その成果はペーパーテストの上にもあらわれてくるものと考える。

 とかく,直接的な現地観察では通りいっべんの散歩的観察になりやすいし,間接的な地図や資料による観察でも,視点がなくてばく然と見すごすことになりやすい。

  ここでの指導では,
 ○ 身近で,現実的な事象をありのままに見る。
 ○ その事象のなかから・観察のねらいにあてはまるものを選び出す。
 ○ そのなかで,何が問題になるのかに気づく。

  など,具体的な事象を対象にして,子どもが社会事象をみる「視点」を育ててゆけば,これは
 ○ 比較する力
 ○ 選択するカ

 さらに向上すれば,
 ○ 分析する力
 ○ 関連させ総合する力
 となってはたらくようになると考える。

2 「思考力」
 例えば,問いに全然関係のない誤答反応が意外に多いなど,各学年の誤答傾向から共通して感じられ


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