福島県教育センター所報ふくしま No.6(S47/1972.6) -009/025page
(1) 数と計算の意味
この領域は全学年,「図形」について低い正答率をしめしている。1年,2年を除いて,他学年はすべて,50労をわっており,指導面において特段の改善が望まれる領域である。分布の谷にあたる3年,4年,5年で特に正答率が低く,児童に抵抗感があったと見られるものは,
3年で ○小数の表わし方の理解 4年で ○概数が用いられる場合の理解 ○計算過程の計算法則の理解 ○分数の意味・約分の理解 5年で ○倍数・約数を集合としてみる ○概数の積・商の処理のしかた である。特に概数については,計算結果から概数をとっている誤答が数多く見られた。概数をとって,その結果を概数にまとめるものであることを,今後の指導にじゅうぶん留意する必要があると考えられる。また,概数は,その使われる場面において,能率的に処理するためのものであるので,たんなる計算技術としてのみでなく,概数使用の必要感を与える教材提示がもっとも重要なものであると思われる。
次に約数・倍数を集合としてみる問題は「ペン図」等,集合の用語・記号の理解不じゅうぶんも原因としてあると思われるが,むしろ,約数・倍数の意味理解の不正確にあると思われる。今後は数の構造や用語の効果的な指導法の改善が必要である。
(2) 計 算
この領域は最低65.2%(5年)最高84.2%ら(1年)で予想正答率をはるかに上まわっていたことはよろこばしい結果であった。この領域での問題点は,誤答分析からみると,1つの問題に対して,誤答例がひじょうに多くあり,どのような手順,過程を経た結果なのか想像できないものがある。児童は思考がゆきづまると,解決の方法を試行錯誤に求める傾向があり,このときは,基本的な演算の意味内容さえ,理解せずに解答するものである。「計算」領域の技能的なものは高い正答率を示す反面,「計算の意味理解」が低い正答率であることは,指導要領での領域「数と計算」の指導にはじゅうぶん考慮すべき問題があると見られる。(3) 量と測定
○補助単位が十進法のしくみによって決められていること。
この領域も,5年を谷とするX字型をしめしている。しかも,40%をわる正答率をしめす原因となっているのは「面積,体積を概測する」問題であった。概数処理の問題であるが,(1)4年の概数が用いられる場合の理解が低い正答率であったこととあわせ,今後,具体例を通して,概数をとって,能率的に処理する訓練をする必要を痛感する。また「速さ」では,「単位量」が時間という無形なものであることが,その単位の理解を困難にしているが,速さの理解の根底として,「単位量あたりの大きさ」の考え方の指導法の改善も必要であると思われる.つぎに,各単位の関係の理解の問題であるが,ここで考えられることは,メートル法の単位のしくみの特徴として
○基本的な量をもとにして,他の量の単位が誘導されるしくみになっている。
の2つの性格の理解がなされていないと思われる。今後の指導において,ディメンションの問題も,単位の十進構造とともに,より効率的な指導法が望まれる問題である。(4) 図 形
この領域は他領域と異なって2年,5年を谷とするW字型分布をしめしている。5年の正答率が33.2%と最低の正答率であった。これは,前学年までにくらべて,論理的な思考が要求されてきたのも一要因と考えられ,高学年での図形指導上多くの問題点がみられる。5年で特に正答率低下の原因となった問題は,
1 包摂関係に着目した基本的な図形の理解
2 円周率の意味理解
である。1のうちでも,正方形,台形等図形相互の包摂関係の問題は正答率11野と最低であった。円周率の問題も,円周率の定義の記憶は簡単であるが,その意味の理解はむずかしいものであると思われる。算数の学習では,「分析的に老察する」ことと同時に,「全体的直覚的には握する」ことがたいせつであるが,この点,図形がもっとも適切な内容である。
中学年以降での図形指導の特色は,基本的な図形を包摂関係や対杯に着目してとらえられるようになることであり,ここに集合の考えなどを積極的にとり入れて論理的に究明することによって,これまでよりもより深い指導がなされるべきものであると考える。
また,2年生で谷となった大きな原因は,図形の要素としての,辺,頂点,面を知りこれらの用語を理解して用いることをねらいとした問題であった。前の指導要領では,辺,頂点を,へり,かど,などの幼児語を用いていたためと思われる。かど,の用語には角の意味に用いられる場合,頂点の意味を表わす場合などあいまいさがある。頭点の用語なども早く導入し,「角」「頂点」などの区別をはっきりさせることが必要である。
(5) 数量関係
この領域は,指導要領には特別に1年には目標としてかかげていないので,検査問題の領域には2年以降に領域を設定してある。この領域での最低正答率は4年となっている。この領域は内容的には1 関数
2 式表示
3 統計
の3項目に分けられているが,統計の問題に低い正答