福島県教育センター所報ふくしま No.6(S47/1972.6) -013/025page

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 ここで問題として話し合われたことは,巷(ちまた)には性文化のはん濫があり,最近とくに性の快楽を中心にした読みものや漫画などがあり,子どもたちへの影響が予想されるということであった。

 これは単に言葉や服装などの表面的なことだけでなく性や男女関係をめぐる人間のあり方が基本的に問われるという点から,性文化の実態を明らかにしようとしたものである。

 調査を実施するをこあたっては,一部の先生から「寝ている子を起こしはすまいか。」との不安感を表明されたのが印象に残る。はたして子どもたちは,眼をさましているのか,あるいは熟睡しているのか,こんな点を調査によりみてみたいと思った。ある方からは「性」とか,セックスということば自体わからないのにこんな調査はどうしたことかとの話もきいた。性とは「恥ずかしいもの」「けがらわしいもの」と考える一部の親や教師の態度が,子どもにどのような影響をもたらしているのだろうかと考えさせられた。

 「性とは,人間が成長すれば自然におぼえるものだし,おとなになれば何の支障もなく性機能を営むことができるし性をそんなに指導する必要はないのではないか。」とか「性と生殖とを直結させる意見をもっている方」あるいは調査にあたって「見るな,ふれるな式」の考えでご協力いただけないなど,調査にあたって種々の問題があり深く考えさせられた。

 そこで性調査の2,3の点をあげて参考に供したい。

1 調査対象と調査方法

 小学校6年7校,中学校2年7校,高校2年10校,男女それぞれ250名ぐらいずつ。また地域性を考慮して都市部と農村部とが,ほぼ同数になるよう抽出した。調査人員は,1,613名で質問紙による調査を行なった。

 2 性文化への反応

 現在の子どもたちは,テレビ,雑誌,映画,絵などでアベック,キス,ヌードのシーンを見ることが多いが見たときは,1なんとも感じないか,2いいなと思うか,3エッチだと思うかの3点のうちどれかを聞きただしてみた。

 手をつないでいるアベックをみて,なんとも思わないというのが,小学校男子(都市)の53.2%,中学校男子(都市)59.3%から,中学校男子(農村)63%,中学校女子(農村)57%と上昇度合を示している。地域差はほとんどないし,半数以上がアベックに対してなんとも感じていない。楽しそうだと思うのは,小学校男子(農村)の49.6%と高校男子(都市)61.5%,高校女子(農村)の59.7%と,上学年へいくにしたがって楽しそうだの意見が多く好ましい状態であると眺めている。

 エッチだと思うのが,小学校女子(都市)の20.7%が最大で,2人で堂々と手をつないでいる姿にあっとうされたのか,その状態を問題にしたのではなかろうか。ついで中学男子(農村)の5.5%が第2位で,高校生にいくにつれてエッチだと思う意見よりあたりまえという意見になっている。そして楽しそうだという意見が57%以上しめるようになるのは,異性にめざめた年齢に達して楽しいという意見にかわっていくすがたがみられる。

 キスについてもなんとも思わないが,中学校男子都市の54.7%と農村の59.6%があたりまえと変化していく。行動がそれにともなうことは疑問だが,エッチだととらえるものが2.1%〜7.3%で,この年代の子は,キスがいやらしいものというとらえ方をしなくなる。

 低年齢の小学校では,エツチだと思う者が,反対に半数以上で,男子56.5%(平均)女子68.4%(平均)がみられるのは,道徳的観念でみているのか,あるいは異性の交際状態をそこまで求めているのではなく,年代差がでているように思われる。

 男女差をみてみると女子が,ややエッチだという率が男子より高い。これは要求度が男子にくらべ少ないのか依存的なのか,あるいは性格的に受容的行動面が解答に表われたのではなかろうかと思われる。こんな様子から性の自覚は,地域性がなくなり,旧来の考え方とかなり違った意見がみられる。現に子どもたちは,日夜マスコミによって知りすぎている子が多い。また「知ったからといって,へんになんかなるもんか。」という子どもの考えにかわってきている。

 「情報化社会」といわれる今日,いろいろな情報が,いつでもだれでも手軽に入手できるのだから,正しく伝え,正しく与える責任のほうが大事になってくるのではなかろうか。したがって性の無知から起こる非行や道義心のみだれを少なくすることのほうが先決である。それには,

1.のぞましい環境をつくる。
 (1) 気がねなく話しあえるふん囲気と人間関係を重視する。
 (2) 健全な男女交際が明るく楽しい気分を発散させる場とする。
2.マスコミによる人心の影響を考え,価値観を混乱させない社会的風潮をつくるようにつとめる。
3.性に対する適正な考え方と指導体制の確立を考慮する。
 以上3点について将来を見通した考えをもちたいものと思われた。

 3 異性への意識

 小学生は,スポーツがうまくほがらかな人をのぞみ,ついでやさしく親切な人とまじめで正直な人をあげている。男女児ともこの点は同意見であり,ここに学年差は見られない。かっこよくきれいな人や頭がよく勉強のできる人は,2〜7%で,あまり意識にあるとは限らないし,現代っ子は,そのようなことを望んでいない。

 中学生になると,1友情−2愛情−3軽い交際−4恋


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