福島県教育センター所報ふくしま No.7(S47/1972.8) -002/025page
教育内容・方法に関する研究,資料提供
ー小・中・高,教材研究を中心としてー
音楽科学習指導の改善
(音楽の本質に迫る音楽教育)
第1研修部 佐藤政夫
近年激動する情報化社会の変化から,進展する社会に対応するため,教育が根本的に検討されなければならない段階に直面している。
従来の教育内容は,ややもすると現象的で記述的な知識の堆積に,音楽科においては表現面の技術のみの傾向がみられたが,このような傾向を改め,枝葉末節の知識と技術のみにかかわることなく,現実社会の変化にたいして,主体的に立ち向かい得る調和と統一のあるすぐれた人間性を育成し,21世紀にたくましく生き得る国民の育成をめざし,これに応ずるような教育内容の組織だてをしなくてはならなくなった。
特に音楽教育に要請されることは,今までよりももっと音楽の本質に迫る人間形成のための教育を求められているし,またこの点について音楽によせられている期待は非常に大きい。
ここで問題なのはどのような音楽教育のあり方がこの期待にそうのかということである。今までのような,ある曲をうたわせたり奏することのみのあり方には期待はなく,人間性の教育へと期待される音楽教育のあり方は,「音楽の本質に迫る音楽教育の在り方」にある。
次のA図は今までよくみられる図であるが,これは音楽の領域から考えられた音楽のシステム化である。しかしこの図は表現に関することと,基礎の位置づけのことであり,音楽の本質に迫るシステム化ではない。
創造性の育成という音楽の目標と結びついたシステム化の図は次のB図とC図のように改善されるべきであろう。
1. 音楽教育の現代化をはかる。
音楽の本質に迫る音楽教育のあり方にするには,音楽教育の現代化をはかることであり,それにはつぎの3つの支点に志向することである。
(1)創造性の育成をはかること。
音楽科に要請されることは,表現活動もさることながら,この創造性の育成にあること,勿論このことは全教科に通じて要請されることではあるが,特に音楽科は他教科に比し最適の要素をもっているものであり,また他教科で取扱うことのできない面をもっていることを認識しなくてはならない。
よく情操教育といわれているが,これまた芸術教科のみで果たすことでなく全教科で考えなくてはならぬことであり,非常にむずかしいことである。しかし情操教育の中で教育の可能な点は創造性の育成にあると割り切る必要がある。
音楽教育は常にこの創造性の育成にあるが,この目標のためには音楽学習のシステム化と教材の構造化をはからなければならない。
(2) 基本的事項を精選し教材の構造化をはかる。
構造化とは教科の素材を精選し,何が根幹で,何が枝葉であるかをきめ,論理的に系統的に配列し,その