福島県教育センター所報ふくしま No.7(S47/1972.8) -004/025page

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  ー・ハ一モニー,その他表情の特徴・様式など)を理解させることである。

   例えばドイツ民謡に例をとるならば・ドイツ民謡の特徴としてメロデーが分散和音的なものが多いこと,したがって合唱的である。表情としては素朴で平凡であるが深く何か秘められているかんじである。

   イタリヤは3拍子の民謡が多く,明るく露骨で大げさであり,伴奏がギター風である。

   フランスは舞曲的なものと宗教的民謡が多く繊細で小さなメロデーが多い。

   日本は2拍子が多く,音階が5音音階でありヘトロフォニーとシンコペーション,小ぶしとして3連符が多い。和声は4度が多い。

   各国の民謡を以上のような特徴をよく理解させた上で表現させることにより,その民族の心をうたいあげ,音楽の心に触れさせるようにするのが民謡の構造化である。

 (イ) 舞曲の教材構造化

   世界どこの民族も舞曲をもっているが,特に大切な舞曲は,マーチ,メヌエット,ワルツ,ガボット,ポルカ,ポロネーズ,ボレロ,サラバンド,リゴードンなどであろう。これら舞曲は古典派・ロマン派音楽の基礎であり,これらの音楽を理解させるには,舞曲を理解させることであり,その力が転移力となるわけである。

   この舞曲の特長はリズムにある。したがって各舞曲のリズムパターンを構造化することである。

リズムパターン

 (ウ) 小3部形式と複合3部形式の教材構造化

   民謡はほとんど小3部形式かaa´bb´の2部形式であり,舞曲は複合3部形式であることから,この形式は諸形式の基礎とみるべきであり,この形式は知的理解より感性的に捉えさせる必要がある。

(2) 文化史背景の教材化

   ここでいう教材化とは音楽史の教材化ではない。とりあげた曲を,その曲のつくりあげられた時代的歴史的文化的背景をもとにして焦点を求め,その焦点に,とりあげた音楽の心を照合することをいうのである。勿論その作曲者をとり扱うときも文化史的背景のもとにとりあげるべきである。

  文化史の焦点 音楽の焦点
・ルネサンス期の音楽 ・文芸復興と人間意義の再認識 ・複音楽と対立法
・バロック音楽 ・絶対主義と町民実力の増大 ・楽器の発達と舞曲
・組曲とフーガ形式
・古典派音楽 ・啓蒙思想と道徳論理 ・ソナタ・ソナタ形式
・ロマン派音楽 ・市民革命とナポレオン欧州征覇から個人主義と国民主義 ・音楽の叙情性(リート)
・標題音楽
・印象派音楽 ・科学機械の発達と自然主義 ・6全音階・連続8度連続5度
・現代音楽 ・第一次大戦後楽団員の不足と人間の生命を捉えようとする意欲(価値基準の探究) ・表現主義と12音音階
・民族的新古典主義と原始的リズム
・偶然性音楽の前衛音楽

(3) 単元名

  上記音楽の本質から原理原則をさぐりだし・その原理原則を,教材の構造化をはかるために,根幹となるべきものを精選したわけであるが,これをまとめる意味において単元名としてあげてみる。

 ・世界の民謡(国別にあげる。民族別にあげる。地理的にあげる方法もある。)
 ・日本の民謡(日本のわらべうた・日本の伝統音楽日本の楽器たどとあげる方法もある)
 ・世界の舞曲
 ・3部形式と複合3部形式
 ・バロックの音楽と組曲
 ・古典派の音楽とソナタ形式
 ・ロマン派の音楽と標題音楽
 ・印象派の音楽と6全音階・連続8度
 ・現代音楽と12音音楽
 ・音楽の基礎

 以上の根幹を系統づけ組みたてることが音楽の本質に迫る音楽教育改善の第一歩である。またこの根幹を発見学習の方法によって音楽教育が営まれなければならない。


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