福島県教育センター所報ふくしま No.8(S47/1972.10) -002/030page

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    教育内容・方法に関する研究,資料提供

      〜小・中・高教材研究を中心として〜

=国語・学校経営=

     「言語環境を整える」ということについて

                          第1研修部 松浦淳一

 1. はじめにー国語審議会の建議からー

 昭和41年6月から「国語施策の改善の具体策について」審議を重ねてきた国語審議会では,去る6月28日は文部大臣にたいして「当用漢字音訓表」及び「送りがなのつけ方」の改定について答申するとともに,「国語教育の振興について」と題する建議を行なった。その中で私達にとくに関係の深い「学校教育に関する事項」では次のように述べている。(3,6略)

 「1 学校教育にあっては,国語科はもとより,各教科その他の教育活動全体の中で,適切な効果的な国語の教育が十分に行なわれるよう,教育内容の充実,教育方法の改善などを図る必要がある。

 2 国語の教育は,国語科担当の教員はもとより,学校教育に携わるすべての教員に課せられた重要な任務である。従って,教員養成を行なう大学では,国語に関する知識・能カを教員を志望するすべての者の基礎的教養として重視する必要がある。

 4 小学校・中学校・高等学校の国語科では,国語の各能力の均衡のとれた発達を考慮しつつ,文字や文章を読み書きする力をいっそう充実するように努める必要がある。

 5 幼稚園・小学校・中学校・高等学校では,幼児・児童・生徒を取り巻く学校内の言語環境を整え,適正な言語活動が行なわれるよう配慮する必要がある。」この中の1・2で述べられている要点の前提となっているのは,「国語の教育は,学校教育に携わるすべての教員に課せられた重要な任務である」という考え方であり,その任務を遂行するためには,「教育活動全体の中で,適切な効果的な国語の教育が十分に行なわれるよう教育内容の充実,教育方法の改善などを図る必要がある」という判断をしているのである。そして,こうした国語教育振興のための内面からの改善方策とともに,より外的なものとして取り上げられているのが, 5 に述べられている「児童・生徒を取り巻く学校内の言語環境を整え適正な言語活動が行なわれるよう配慮する必要がある」という「言語環境」の問題なのである。

2. 「言語環境を整える」ということについて

 さて,この「言語環境を整える」という問題であるがこのことについては,国語審議会が取り上げる前に,すでに文部省の改訂学習指導要領の中に取り入れられている。すなわち,小学校学習指導要領では「国語」の中の留意事項として,また,中学校学習指導要領では「総則」の中の配慮事項として,それぞれ「言語環境を整える」ということが明示されている。つまりこの問題は,現在の国語教育にとって,それだけ必要度の高い今日的な問題であるということが言えよう。それで,ここでは,この問題について具体的に考えてみたいと思う。

 正しく美しい「国語による伝達を効果的にして,社会生活を高める能力と態度を養う」ことを目標の一つとする国語教育の観点からすると,現在のことばの使い方・受けとり方には,憂慮、すべき点がかなりありそうである。そして,その対策について考える場合には,ただ単に国語教育の問題としてだけではなく,社会構造の特性による生涯教育の定着度の低さとか,情報産業の急速な進展にともなう情報量の増大などの問題と,密接に関・連させて考えていかなければ,根本的な解決は得られないのかもしれない。例えば,外来語の浸透にともなう語彙の変化や,価値観の変遷から起こる敬語の混乱などで,大きく揺れ動いている日常の生活言語については,学校の国語教育だけで正すことは無理なように忠われるのである。が,しかし,そのことについては他の機会に述べることにして,学校教育の場で「言語環境を整える」のにはどうすればよいのであろうか。

 まず問題になるのは,「言語環境」ということぱの概念を,どのようにおさえたらよいかということであろう。このことについては,林大氏が「中等教育資料7月号」の中でくわしく説明しておられるし,また,輿水実氏も「小学校学習指導要領の展開国語'科編」の中で触れておられるが,それらをまとめてみると「言語環境とは,言語能力が育成されるのに影響を与える周囲の条件」ということになるのではないだろうか。

 次に,「言語環境を整える」ということについて考えてみよう。このことについて,一輿水氏は前書の中で「たとえば,1年入学児のために,学'校の器物や植物に文字板をつけておくというのがそれである。校内放送では,いつも正しい言葉が聞こえるようにす乱各教科の学習


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