福島県教育センター所報ふくしま No.8(S47/1972.10) -004/030page

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し,それに応じた指導過程をくむならば,作文カは高まるであろうという見通しをもって考察してみたい。これからのべることは,実際の授業をとおして実験検証した結果ではなく,試案的なものであることをおことわりしておきたい。

 こどもの個人差は指導者の個人差にもつながると極論する人もいる。コンクール等に応募された数多くの作品にあたってみると,さまざまなかたちの差を発見することができる。そこには指導者の文・文章に対する構えが相当強く影響していることがわかる。

 われわれは能力差という用語をいとも簡単に使用するが,実際,能カ差の実態を確実には握しているであろうか。具体的な指導の手だては,と問われると返答に苦しむことがしばしばである。案外に観念的にとらえていることが多いことに気がつく。個人個人の能力を客観的にとらえてこそはじめて能力差に応ずる指導の具体策が考えられるのである。

 作文能カの概念であるが,遠藤勝郎氏(東京都中学校教諭)は次のようにのべているが参考になるであろう。

(1) 生活態度
 行動性,情緒性,規範性,道徳性
(2) 精神活動的能力
 観察する能力,直観する能力,記憶する能カ,想像する能カ,比較する能力.感受する能力,思考する能力
(3) 作文する能カ
 主題決定の能カ,取材の能力,構想の能力,表現の能力,推考の能力
(4) ことばの能力
 語句力,文字力,文章力,文法力
(5) 文章の形態に応ずる能力
 手紙を書く能力,記録を書く能カ,意見感想を書く能力,論説を書く能力,記録報告を書く能力,記事を書く能力,生活文を書く能力

 これらの能力は総合された形であらわれるのがふつうであるので,個々のものとして測定することには難があるが,あえてとりだして測定できる能力といえば,(3),(4),(5)をあげることができよう。またこの能力は作文能カに直接かかわる能カでもあるので,作品等をとおしてこまかに分析して診断してみる必要がある。

 実際診断にあたっては,各学年の発達段階を考慮した具体的項目を作成しなければならない。学習指導要領に示されている指導内容を基準に考えていくことが妥当と思う。こどもたちが,その内容をどの程度理解し,能力として身につけ実践しているかの診断である。各学年ごとの診断項目を作成する資料としては,古いものではあるが,昭和25年に示された指導要領国語編に,国語能力表としてのべられているものなど参考になる。今回は望月先生の著書の中に,各学年の到達目標があるので,それを活用させていただく。

小学1年
  診断項目                   児童番号 1 2 3 4   39 40
興味関心 1思ったことを文に書くことの興味ももつ              
2文を作ることに興味をもつ              
内容 3何かをいおうとしているかがわかるように書けるようにする              
4身のまわりのできごとを簡単に記録できるようにする              
構成 5内容をいくつかにわけて書けるようにする              
表記 6文に○をうてるようにする              
推考 7書いたあとで読みなおすようにする              

1 診断項目ごとに3段階の評価をする。

 1 ・先生や友だちに毎日のできごとを話をしたり,日記などにかく (A)   ・問いかけれぱ話をしたり,ときには日記もかく              (B)    ・あまり話したり,日記を書いたりしない           (C) 2 ・感想文などきがるにかく                 (A)   ・課題としてだされるとかく                (B)   ・ほとんど書こうとしない                 (C) 3 ・作品を読んでみるとおおよその筋がわかる         (A)   ・ちょっと説明を聞くと筋がわかる             (B)   ・筋をつかむのにはむずかしい               (C) 4 ・連絡帳などに書く内容がまとまっている          (A)   ・記録する事項をひきだしてやると書ける          (B)   ・なにを記録してよいかわからない             (C) 5 ・おおよその意味のまとまりを考えて書いている       (A)   ・まとまっているところもある               (B)   ・文,文章をならべたにすぎない               (C) 6 ・文のおわりに○をうつことが大体できる          (A)   ・まちがってうつこともしぱしぱある            (B)   ・どこにうってよいのかわからない             (C) 7 ・よみなおすことが多い                  (A)   ・ときにはよみなおす                   (B)   ・ほとんどよみなおさない                 (C)

2 この評価は絶対評価とし,その評点を児童番号らんに記入する。

3 診断のための用具を明らかにしておくこと。1,2,4,7は観察法,3,5,6は作品分析法というように

4 尺度は主観的,独断的に陥ち入らないように,同学年の先生とか,同研究部の先生とかで十分検討してみること。

5 到達目標の診断であるから,実施期は学年末か,学期始めにするとよい。特に学期始めの場合は,直前学年のもので診断することがのぞましい。


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