福島県教育センター所報ふくしま No.8(S47/1972.10) -008/030page

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い。すなわち,

 ・人物のどのような面が,児童たちの興味や関心をさそい,その史的追求が可能なのか。
 ・どのような時代イメージ,人物のイメージをそれによって児童たちが描くことができるのか。また・描かしたいと考えるのか。
 ・それが歴史の流れの中に,どう位置づくものであるのか。
 ・人物のどんなところで「人間の主体的意欲」を学ばせるのか。また,何をもって人間形成への精進を学ぱせるのか。

 などについて明らかにすることである。そして,それが歴史学習の目標の何に結びつくものであるかを吟味検討することが必要となってくる。

 教材化に当たっては,学習目標や児童の可能性および児童へのその教材の果たす歴史的役割などの関係・価値を考えて取捨選択することが大切になってくるし,またその素材の中味を分析し,素材の内容相互の関係,他の素材との関連などを明らかにして,学習に有効に働きかけうる資料に再構成する手順をふまなければならない。

 上記の点をもとに教材化を進めることになるが,その具体的な手順や留意事項についての要点をかかげ,次の問題へとすすみたい。

 ・人物の生きた時代の特色をさぐる。
  ・時代の状況ないしは時勢の流れ
  ・当時の人々の生活とねがい
  ・人物と同じ階層の人々の生活とねがい

 ・人物の主な行為(行動)と歴史的な業績,そのための精進・努カや人間味がどこにあるかをさぐる。
  ・主要な履歴を書きあげ,人物のイメージを描く。
  ・特に,次の点を明らかにする。
   ×危機的な場面におけるその人物の決断と行動
   ×意図や願い,課題と課題意識
   ×国家や民族の運命,民衆の生活への慮り
   ×民衆とのかかわりあい
   ×苦悩と努力
   ×人生観や世界観
   ×政治,経済,外交,創造的な能力
   ×性格,人格,人間性
  ・歴史の法則性,発展性にてらして,その人物の果たした歴史的意義と役割をとらえる。

 3. 資料をいかした学習の展開

 さきによって精選された教材は,学習の場に仕組まれ展開されて真価を発揮する。ここでは本命ともいうべき学習の展開について,日頃考えていることをのべてみる。

 その第1は,児童が「時代人になりきって考える」ことと,「人間の主体性,精進・努力,創造,影響について吟味する」ことがじゅうぶんにできる学習展開の過程をつくり実践してはということである。

 学習過程にはいろんな考えによりいろんな型があるが,いわゆる一般的な学習過程<導入→展開→整理> に,導入段階で立てられた仮説に基づいて学習問題を追求する時に,児童が教師の説話や具体的な資料によって,その人物のおかれている立場,状態,環境に自分の身をおいてその人物の考え方や歴史的意義を考えることができ,また,いろんな面に思いをめぐらして歴史を追求する場面をつくってやることと,人物の歴史に対する働きかけ,業績の歴史的役割,価値などをじっくりみつめ味わってみることによって,その人物の主体的な意欲,人間的精進,努力および創造や時代,人々に与えた影響について感得・共感を得,国家や社会に尽くすことの意味と価値を吟味することができる場面をつくってやることである。これらの場面で活動と思考をじゅうぶんにさせ,終末においてひとりひとりの児童が,時代についてのイメージを明確に描くことができるようにしたいものである。

その第2は,資料をいかした学習の展開をくふうすることである。

 さきにあげた点を吟味して学習過程をくみ,児童の思考と活動を活発にし,よりよい成果を得るためにはいろんなてだてはあるが,資料を学習の展開にいかすくふうをすることが大切であると考える。なぜなら,児童は学習のめあてとするものを,具体的な資料をもとにして思考し,理解し,あるいは人物と1司化し共感しながらときあかし,身につけていくものである。児童の思考や活動は,資料と密接不離の関係にあるだけでなく,思考や活動をより活発にし,より個性化する働きをもつものであるといえるからである。それだけに,児童の学習のもとでとなる材料=資料を整えること,そして,これを学習過程に位置づけ,児童が活発に活動し思考するように,資料を活用するくふうが切にのぞまれるのである。おわりに,資料をいかした学習の展開とその留意事項の概要を,ご検討の資料として提供したい。

表(2)  資料をいかした学習の展開と留意事項

1 導入の段階
学習の流れ 児童の活動と思考 資料の活用
時代を代表する資料で印象的に動機づける。→ ←先行経験えおいかして考え問題を発見する。← ←どの児童にもよくわかる具体的資料にかえる。

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