福島県教育センター所報ふくしま No.8(S47/1972.10) -015/030page
(4) 教育相談の問題点
1 相談内容の複雑多岐
ケースの多様性からみて,専門的教養,技術を身につけた担当者を必要としている。
2 教育相談施設の整備
テレビカメラ,野外遊戯場,遊具等の整備充実が緊急の問題になっている。
3 担当者研修機会の確保
担当者自身の研修時間の確保ができたいほど,相談件数が多くなってきている。4. 教育相談講座の実態とその問題点
(1) 教育相談講座の実態(3泊4日) 講座内容 教育相談の問題点 心理診断法 ソシオメトリックテスト法 事例研究法 面接相談の技術 各期の精神障害 性格検査(P・F
Y・G)教育相談のすすめ方 小学校 ○(2) ○(3) ○(2) ○(2) ○(4) ◎(4) ○(2) 中学校 ○(3) ○(3) ○(4) ◎(4) ○(4) ○(2) 高等学校 ○(2) ◎(4) ◎(4) ◎(4) ○(3) ○(2) 計 3(7) 3(10) 1(2) 1(2) 3(12) 3(12) 3(7) 3(6) ◎ー外来講師(小1,中1,高3) ○ー所員担当 ( )内数字は,時間数
(2) 実施上の問題点
1 受講者の教育相談に対する経験の差によって,焦点が定めにくい。
2 関係機関の見学についての要望もあるが,3泊4日の中に組み入れることは無理である。
3 教育相談の実際を見学させたいが,人数,担当者に限界があってできないのは残念である。
1 については,事前研究資料をもとにして発表,司会に経験者をあてることによって,研修員相互の満足感を充足することにしている。
2 についてぼ,各地区の研究会等で立案し関係機関と学校のみぞをうめるよう配慮している。5. 情緒障害児をめぐる諸問題
文部省の全国調査の結果によると,情緒障害と疑われている者は小学校43,002名,中学校20,715名といわれ,その出現率はO.43%だという。その内訳は,登校拒否症,神経症,かんもく症,自閉症,精神症,脳の器質障害,その他にわけられている。この情緒障害児の中約6万7百名が普通学級に在級し,残り3千余名が特殊学級にいるとすると,大部分の該当児童,生徒が普通学級の中に放置されたままになっている。
情緒障害は,本人の身体的,知的欠陥がなく心理的情緒的なあつれきに起因する問題行動であるからどんな形の問題行動もおこり得るし,系統的分類も容易でなく,具体的な症状をとらえてよぶことも多い。
どもり,だまりこくっている子,首をふったり手を動かす子,かんしゃく,反抗,乱暴,虚言,集団不適応など問題行動は千変万化する。
昨年来200件をこす教育相談を担当して考えさせられることが多い。それについて少しのべてみよう。
(1) 普通学級において情緒障害児を指導することは可能であるとの確信をもって教育の可能性を追求していきたい。
(2) ひとりの障害児のため困っている教師,めいわくをうけている児童・生徒も多いことを考えると,情緒障害児のための特殊学級の設置も必要であり,関係機関との提携も必要であろう。
(3) 「情緒障害」ということばを理解している人が少なく,十把ひとからげの一斉指導からぬけきったはずだが,ひとりひとりの児童・生徒に眼を向け,心と心のふれあう明るく楽しい教育の展開が期待されている。
(4) 情緒障害児は共通して劣等感,不信感をもっているが保護者も同様の場合が多い。あたたかくゆきとどいた子弟関係をもって,親の教師に対する信頼感を深め指導の効果をあげたいものである。6. おわりに
以上のべてきたことを簡潔に表現ずればつぎのような日常の五心が肝要であるといえよう。
(1) はいと返事する素直な心とのふれあいを大事にする。
(2) おかげさまという謙譲の心で担任や親に接する。
(3) どうしましたかという受容の心で,相談に応ずる。
(4) ありがとうと感謝の心と心が通じあえるようにする。
(5) すみませんという反省の心をたいせつに育てる。