福島県教育センター所報ふくしま No.8(S47/1972.10) -016/030page
中学校教材
炭素鋼の引張試験と熱処理について
第2研修部 遠藤 徳
一引張試験
1. 目的
炭素鋼材の代表的な機械的性質である引張りの強さや伸ぴなど,引張試験の測定値から求め,炭素鋼材の機械的性質の違いを理解する。
2. 用具・材料
(1) 万能材料試険(30t,アムスラー型)
(2) パス,ノギス,マイクロメータ
(3) 定盤,トースカン,Vブロック
(4) ポンチ,ハンマ
(5) 試験片(形状,寸法,4号試験片く図1> 参照材質(熱処理〈表2〉)参照3. 方法
(1) 試験片の準備
1 規格に合った試験片を切削加工し,平行部の中央及び標点位置で直交する二方向について直径を測定して,±O.5%まで正確にはかり,各7本を準備する。
2 試験片に標点を刻印する。試験片の平行部にけがき用塗料をぬり,Vブロック,トースカンをつかって平行部に直線を引き,標点距離に相当する位置に軽くポンチを打つ。
(2) 試験
1 試験片を適当な位置に取リつけ,ハンドルでかたく締めつける。
2 負荷制御つまみを静かに右に回してテーブルを上昇させる。
3 試験片が荷重を増していくと,指針の動きが停止または逆行する点があるので,この点を荷重(降伏点の荷重)を測定する。
4 再び指針が動き,ある点に達すると,指針が置き針を残して逆向きに動きはじめる。この点の荷重(引張り荷重)を測定する。この時から試験片の一部に局部的断面収縮が起こる。
5 指針が逆向きの動きをはじめて少しすると試験片は切断し,指針は,零にもどる。
6 負荷制御つまみを圧力油排出の位置に回し,圧カ油を油タンクにもどし,テーブルを下降させる。
7 メインスイッチを切り,油圧ポンプを止める。
8 自動記録用紙を記録ドラムからはずす。(3) 荷重ー伸び線図
表1,2は,荷重ー伸び線図を示す。
表において,Eは,弾性限度,Pは,比例限度に該当する。荷重は,Sに達して,降伏と共に急に低下し,不安定状態を続ける。降伏を始めてから終わるまでの間の最大応カを上降伏一点といい,Sに該当し,最低応力を下降伏点といい,Lに該当する。
更に,荷重を増加すれば,Bで降伏が終わり,この点より再び荷重の伸びとともに増加する。