福島県教育センター所報ふくしま No.8(S47/1972.10) -018/030page
この結果から.炭素鋼は,含まれている炭素量が,2.06%(炭素量が2.06%を越えるものは鋳鉄)までは,炭素量が多くなるにつれて強さを増し,粘りが小さくなる。粘り強さを必要とする場合は炭素鋼の熱処理を行なうこともあるので次にのべる。
二 熱処理について
1. 目的
日本工業規格(JIS,G,3102)によって,
・機械構造用炭素鋼は,表1に示すような12種類に分類されている。
表1 機械構造用炭素鋼の成分と用途 (※印が試験用) 種類 記号 化学成分 % 用 途 C Si Mn P S 1種 S10C 0.05〜0.15 0.15〜0.40 0.30〜0.60 0.035以下 0.040以下 ケルメット裏金 リベット ピン 小物軸類 一般鍛造品 ※2種 S15C 0.10〜0.20 〃 〃 〃 〃 ボルト ナット リベット 〃 〃 〃 3種 S20C 0.15〜0.25 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 4種 S25C 0.20〜0.30 〃 〃 〃 〃 〃 〃 電動機軸 5種 S30C 0.25〜0.35 〃 0.40〜0.85 〃 〃 〃 〃 スダット 小物部品 6種 S35C 0.30〜0.40 〃 〃 〃 〃 ロッド、スダット、レバー類、小物部品 7種 S40C 0.35〜0.45 〃 〃 〃 〃 連接棒、アクセルシャフト アーム、軸類、継手 ※8種 S45C 0.40〜0.50 〃 〃 〃 クランク軸、高周波焼入部品 9種 S50C 0.45〜0.55 〃 〃 〃 〃 キー、ピン類、軸類、連接棒 10種 S55C 0.50〜0.60 〃 〃 〃 〃 〃 〃 21種 S9CK 0.07〜0.12 0.10〜0.35 0.30〜0.60 0.030以下 0.030以下 筋ローラ 22種 S15CK 0.12〜0.18 〃 〃 〃 〃 カム軸、ピストンピン、ミシン部品 表1の2種の鋼について加熱条件を一定にして,高温状態から異なる速度で冷却して,その硬さを測定することによって,鋼の熱処理を理解する。
2. 用具・材料
(1) 箱型電気炉(VOLT,100,AMP,30,MAXI,1000℃)
(2) 水漕及び油漕(容量18gの石油かん,2個)
(3) 硬度計(ショアーかたさ試験機)
(4) 冷却剤(水,マシン油)
(5) 試験片研摩機,研摩剤
(6) 研摩紙(#80〜#1000)
(7) その他(はし,ヤットコ,ポンチなど)3. 方法
(1) 準備
1 試験片,10φ,長さ30o,各5個
2 各試験片の一端面を研摩してかたさ試験機で測定し検査する。(2) 熱処理
1 試験片を炉内に入れ,熱電対の熱接点になるべく近いところにまとめておく。
2 炉の電源を入れ,除々に温度を上昇させる。
3 炉の温度(2種 900℃ 8種 850℃ 8種850℃)が定温に達したならぱ,その温度に30分保持する。(4) 試験片を炉から取りだして,各試験片ごとに次のように冷却する。
(a) 水冷
水をかくはんしてむらなく冷却し,水鳴りが消えてから水中より引き上げて空中放冷する。
(b) 油冷
水冷の場合に準じて冷却する。
(c) 空冷
ヤットコでつかんで振り,風をあて火色がなくたるまで冷却し,そのまま放置して,空中放冷する。
(d) 焼もどし
水冷した試験片を再び600℃まで加熱し,約30分間その温度に保ってから,油に入れて急冷する。(5) 各試験片を研磨して,硬さ試験機で測定する。
4. 結果
各試験片のかたさは,表2の通りである。ただし,本科の研修講座の実験データを補足整理し示したものである。HSは,5個の実験片の平均値である。